2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of NMR measurement system for a 100 Tesla class magnet
Project/Area Number |
20J00756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 一樹 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴 / パルス強磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで定常磁場下,先行研究のパルス強磁場中で行われていたパルス法NMR測定では,一般に二つの測定パルスで核スピンを励起することによって測定を行うが,測定点同士の間隔は少なくとも数百マイクロ秒以上とる必要がある.パルス強磁場中での測定では,磁場は大きく時間変化するために,各測定点の間で大きな磁場変化が起き,大きく間隔のあいた磁場点での測定となる.加えて,パルスマグネットは冷却のために数十分~数時間のインターバルを要するため,測定点を密にした精密測定は大変困難である. 本課題では,NMRスペクトル測定を100テスラまで拡張可能なパルス強磁場下での測定に最適化することで,これまでパルス強磁場下で困難だったミクロ測定による物性研究を開拓することを目的とする.本課題ではパルス磁場中連続波(CW)法NMR測定法を開発する事により,パルスマグネットに特殊な細工を必要としない,超強磁場まで応用可能なパルス磁場中NMR測定を実現する. 令和2年度は主に(1)測定に用いる分光器・ソフトウェアの開発,および(2)測定対象としているCuInCr4S8粉末試料の定常磁場中でのスペクトル測定・縦緩和率測定を行った. (1)について,世界的な感染症の流行により物品の調達・開発に若干の遅延が生じているが,次年度令和3年度には新たな分光器による信号が観測できる見込みが立っている. (2)については,パルス強磁場による測定に適した強い信号・短時間の磁場発生でも十分に核磁化が立ち上がる短い縦緩和時間を持つことがわかった.令和3年度以降に予定している新規の分光器による測定に適した試料であることが確認できたとともに,低磁場域の磁気相についても知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
世界的な感染症の流行により,特に令和2年度の前半に研究所への入構制限や物品の調達の制限があったため,開発に若干の遅延が生じている. 現在では必要物品の調達がある程度進み開発環境にもほぼ問題が無いため,数ヶ月遅れではあるが当初の予定にしたがって開発・準備が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度はCW法NMR分光器,プローブの開発を引き続き行う.令和2年度の入構・移動制限などの影響で物品の調達や開発に遅れが生じていたが,令和3年度前半にはパルス磁場中でのCW法NMRスペクトル測定の基礎を確立させることを目標に遂行する.具体的には,室温・磁場発生なしに信号テストができる金属Co粉末,パルス磁場の発生と同期した一般的な磁場中の試料信号の測定を順に行い,令和3年度前半中の測定手法の確立を目指す. また,パルス磁場の発生については既存の電源設備を用いるが,並行して適した磁場波形・空間的磁場分布均一性を持つパルスマグネットの開発,製作を行う.本課題では特殊なパルスマグネットを用いずNMRスペクトル測定を実現することが主目標であるが,磁場の空間均一度が高いNMR測定に最適化されたパルスマグネットの開発を行うことで簡易かつ高精度な測定についても実現を目指す. 令和3年度後半には,ブリージングパイロクロア格子 CuInCr4S8の測定を試みる.本試料は単結晶の合成が進められており,また最近低磁場域から複数の磁気相が出現することが示唆されているため,物性を明らかにする手段として本測定系が適していることが期待されている.
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Research Products
(4 results)