2021 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算と機械学習を用いた結晶粒界における原子・電子構造と機能相関性の解明
Project/Area Number |
20J00773
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
清原 慎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 格子欠陥 / 粒界 / アモルファス / 表面 / マテリアルズインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
材料中には,格子欠陥と呼ばれるバルク(結晶)とは異なる原子構造を持つ領域が存在する.それらは材料全体の物性を著しく低下させることがある一方で,的確に制御することでバルクでは実現し得なかった物性を発現させることが可能である.本研究では,格子欠陥が与える物性への影響を理解するために情報科学手法を用いて研究を行った.本年度は,昨年度の粒界の研究に加え,表面やアモルファスの研究においても成果を得た. 粒界では,様々な粒界の原子モデルを作成し,その原子構造を第一原理計算と情報科学手法により解析する.これまで粒界構造モデルの作成には膨大な計算量を必要としていたが,近年ベイズ最適化と呼ばれる手法により粒界構造を効率よく決定する手法が提唱された.本手法を用いて多結晶薄膜太陽電池光吸収層材料として使用されているシリコンの粒界を100種類以上作成した. 表面では,緩和前の構造情報のみから表面の物性を予測するモデルの構築を目指した.まず,第一原理計算により様々な2元系酸化物の表面モデル(約2000個)を作成した.それらのモデルから表面活性やバンド接合で重要となるイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を計算した.これらのモデルの表面における原子構造を記述子としてイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を予測するモデルを作成した.その結果緩和前の情報のみからイオン化ポテンシャルおよび電子親和力を高精度に予測することに成功した. アモルファスでは,第一原理計算によりアモルファス中の酸素空孔は結晶構造中では見られないDimer構造やLone-pair構造を有することがわかった.またそれらの構造はSnまわりのBader電荷と関係していることがわかった.さらに統計解析により,Bader電荷はSnまわりの空間の広さやSn-O結合の大きさと相関していることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,第一原理計算と情報科学的手法を用いることで格子欠陥の原子構造と物性の相関性を明らかにすることである.申請時の予定では,1年目に機械学習と第一 原理計算を用いてカドミウムテルルの粒界構造を決定し,2年目ではさらにシリコンの粒界構造を決定した.またそのほかにも表面やアモルファスなど結晶とは異なる材料への機械学習を適用し成果を得ることができ,当初の計画通り進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目に電子状態計算および系統的な研究や構造-物性相関性の解明および他の系への適用検討を行う予定である.高精度な第一原理計算は非常に時間がかかるため,それを加速化させる手法を構築中である.その手法を現在対象としている系へ適用することができれば,大幅に第一原理計算コストを削減することが可能 である.このように3年目は,1,2年目に決定した多数の粒界構造と物性を理論計算し,研究を最後の段階に移すことができるようにする予定である.
|
Research Products
(6 results)