2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J00838
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
白井 理沙子 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 道徳 / 嫌悪情動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,直観的な道徳判断のベースとなる知覚・認知処理のメカニズムについて明らかにすることを目指してきた。現在は,新型コロナウイルス感染症の影響に伴い,研究を中断している。本年度は、オンライン上で実施可能な調査に切り替え,研究再開後の実験実施が円滑に行われるよう準備を行った。本年度実施した研究およびその成果については以下に抜粋して示す。<道徳関連エピソードデータセットの作成>実験場面で利用するために,様々な道徳と関連したエピソードを含む「道徳関連エピソードデータセット」を作成した。エピソードは,道徳基盤理論における5つの道徳のサブカテゴリ(ケア/危害, 権威/転覆, 公正/欺瞞, 忠誠/背信, 神聖/堕落)それぞれと関連すると考えられる内容を含むように準備された。大規模調査によって,これらのエピソードに対する情動価,覚醒度,道徳的価値,5つのサブカテゴリとの関連度等についての評価値を収集し,道徳のサブカテゴリごとのエピソードの評価値を比較・解析した。<嫌悪情動が空間的注意に及ぼす影響>道徳的嫌悪が視覚的注意に及ぼす影響を調べる前段階として,本実験では,クモやナメクジに対して生じる中核的な嫌悪が空間的注意のどのコンポーネント(注意の方向づけ,注意の解放,注意の回避)に影響を及ぼしているのかについて検証した。実験はすべてオンライン上で実施し,2枚の画像が画面上に表示された後,ターゲット刺激がどちらか一方の画像位置に表示されるように設定した。参加者の課題は,画面上に呈示されたターゲット刺激を検出し,その位置をボタン押しによって回答することであった。実験の結果,嫌悪画像と反対の位置にターゲット刺激が表示された場合の方が中性画像と反対の位置にターゲット刺激が表示された時よりも反応時間が長かった。この結果から,中核的嫌悪と関連した刺激が特に「注意の解放」を困難にしていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,実施予定であった対面での行動実験を中断し,オンライン実験のプラットフォームを利用して実験を実施することとなった。オンライン上での比較的安定した実験系を確立し,研究再開後に重要となるいくつかの実験をオンライン上で実施することができたため,区分(2)としている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も引き続き新型コロナウイルスによる研究中断の措置を取っている。今後の研究の展開としては,道徳のサブカテゴリが視覚的注意に及ぼす影響を瞳孔や眼球運動の測定を利用して検証する予定である。感染拡大の状況に応じてオンライン実験および対面実験を並行して実施し,場合によってすべての実験をオンライン実験に切り替えることができるよう準備をする。
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