2021 Fiscal Year Annual Research Report
石筍の炭酸凝集同位体から過去数万年間の気温・降水量変化を読み解く
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20J00843
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 大和 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD) (70782019)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 石筍 / 炭酸凝集同位体 / 酸素同位体 / 気温変動 / 古気候 / アジアモンスーン / 後期更新世 / 完新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本国内に発達する鍾乳石の成長環境を明らかにするため、鹿児島県徳之島の石灰岩地域では、土壌やトゥファ、洞窟環境の調査をおこなったほか、岐阜県大滝鍾乳洞内や周辺洞窟の内部では、温湿度をはじめとした環境調査をおこなった。降水の酸素同位体比の季節性を観測するため、既報の観測記録の乏しい静岡県静岡市と宮城県仙台市では、毎月の雨水採取を継続的におこなっている。 前年度に国際誌へ掲載した、広島県産石筍からの古気候復元研究で用いた手法を、岐阜県産石筍の安定酸素同位体・炭酸凝集同位体組成のデータ解釈に応用し、岐阜県における過去の陸上平均気温と、降水の季節変動の共進化過程を復元し、学術論文を作成した。本論は、最後期更新世から完新世中期における気候変動過程の、広島県と岐阜県での地域間比較もおこなっており、本邦陸域における気候変動史と、アジアモンスーンシステムとの関連を、より広範な視点から明らかにしている。本論は国際誌への投稿・査読を経た後、修正の上で再投稿をおこない、再査読中である。 実験室では炭酸凝集同位体の温度キャリブレーションに用いる人工カルサイトを一定温度化で作成している。また、2種の凝集同位体指標を併用し、石筍の炭酸凝集同位体組成に見られる非平衡効果を、定量的に補正する手法の実用化を進めている。 本年は炭酸凝集同位体の測定に関連し、共著として参加した1件の国際雑誌論文が受理されたほか、国内の学会では筆頭として1件、共同発表者として4件の発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初に予定していた、炭酸塩試料の追加採取はやや滞っているものの、研究成果の公表作業は当初の計画以上に進展している。 更なる成果公表のための分析データも蓄積しており、計画当初の予定とやや順序が異なるものの、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに十分に実施することができなかった、石筍の炭酸凝集同位体分析を、九州大学で補足的におこなう。 投稿中の古気候研究論文の、受理掲載を目指すほか、他の石筍についても、測定データの解析や研究成果の公表準備を進め、 分析結果は順次,学会報告や学術論文として公表する予定である。 また、日本各地の雨水の酸素同位体組成の季節特性を明らかにするため、静岡県、宮城県、鹿児島県奄美市で引き続き水試料の収集を継続する。 本研究で得られた石筍の炭酸凝集同位体データを、過去の測定データとの合わせて整理し、2種の凝集同位体組成を併用した、非平衡効果の定量的な補正法の確立を目指し、石筍凝集同位体記録から、より定量的に過去の温度を復元することも、本研究最終年度の目標の一つとする。
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Research Products
(6 results)