2020 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病リンパ腫の新規治療戦略開発に向けた分子病態解明
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20J00897
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
杉尾 健志 鹿児島大学, 鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病リンパ腫 / 微小環境 / イメージングマスサイトメトリー |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 遺伝子発現解析に基づく周囲微小環境のプロファイリング: 成人T細胞性白血病リンパ腫(ATLL)17症例の遺伝子発現解析を追加で行った。その結果、先行研究の結果同様B細胞関連遺伝子、樹状細胞(DC)関連遺伝子、CD8陽性T細胞関連遺伝子の発現プロファイルで分類可能であった。 2. 周囲微小環境因子と相関する遺伝子変異の同定: ATLLを含む末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)36症例において微小環境因子と遺伝子変異の相関の解析を行った。その結果微小環境関連遺伝子の発現が乏しい予後不良群(NoME group)においてTP53遺伝子変異、CDKN2A欠失を有する症例が多く、コピー数異常の数が増加することを同定した。 3. 新規治療標的因子の同定: 更に、NoME groupにおける新規治療標的としてBIRC5を同定し、In-vitroで阻害薬、ノックダウンによる細胞増殖抑制効果を確認した。 4. 多次元イメージングマスサイトメトリーを用いた周囲微小環境評価系の確立: 主要な周囲微小環境中の免疫細胞を詳細にフェノタイピングするための抗体パネルを作成した。更に、画像データ解析パイプラインの確立も行った。これらの解析系を用いる事で、1. 腫瘍組織内の免疫細胞の詳細なフェノタイピング、2. 腫瘍細胞と免疫細胞の位置関係の把握、3. 腫瘍細胞又は免疫細胞における細胞増殖関連・アポトーシス関連・主要なシグナル関連蛋白発現の定量が可能となった。1-3の情報を組み合わせる事で、腫瘍周囲の免疫細胞のプロファイルによる腫瘍細胞の蛋白発現の変化を同定し、微小環境中の免疫細胞が腫瘍進展又は腫瘍抑制に寄与するメカニズムを同定する事が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標であった、1. 遺伝子発現解析に基づく周囲微小環境のプロファイリングと4. 多次元イメージングマスサイトメトリーを用いた周囲微小環境評価系の確立が達成できているが、微小環境を再現した疾患モデルの作成に関しては、患者腫瘍組織の3次元培養や免疫不全マウスへの異種移植の実験を行っているが成果が得られていない。一方で、BIRC5という有効な新規治療標的の同定という想定していない成果をあげる事ができている。以上より、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、患者腫瘍組織の3次元培養や免疫不全マウスへの異種移植の実験を行い、微小環境因子も含めた腫瘍組織の再現に最適な培養条件、移植条件の検討を行う。 昨年度確立した、イメージングサイトメトリーによる解析系を用いて、多数症例の解析を行う。それによって微小環境中の免疫細胞が腫瘍進展又は腫瘍抑制に寄与するメカニズムを解明し、新規治療標的となりうる微小環境因子を同定する。 新規治療標的として同定したBIRC5の阻害薬の効果を患者検体異種移植モデルを用いて評価し、論文投稿する。
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Research Products
(3 results)