2020 Fiscal Year Annual Research Report
光圧による局所濃縮を利用したハロゲン混合ペロブスカイト単一ナノ結晶形成機構の解明
Project/Area Number |
20J00974
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡本 拓也 北海道大学, 電子科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ペロブスカイト / レーザー / ハロゲンアニオン / 欠陥 / 蛍光寿命 / バルク結晶 / ナノ結晶 / 顕微分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次世代発光材料である単一ペロブスカイトナノ結晶の形成機構、および結晶間または単一結晶-色素分子間の反応機構を解明することを目的としている。光圧による局所濃縮および逆温度再結晶法によって結晶を析出し、顕微分光法によって結晶間のハロゲン交換反応や単一結晶-色素分子間のエネルギー移動の機構、そしてnmオーダーの極小反応場における単一ナノ結晶の形成機構を解明する。本年度の研究では主にペロブスカイトマイクロ結晶の欠陥回復における結晶形状依存性の解明について研究活動を行った。直方体状、プレート状、そしてロッド状の臭化物ペロブスカイトマイクロ結晶を生成した。結晶の前駆体分子であるメチルアミン臭化水素酸塩溶液を加え、ピコ秒レーザー照射を照射することでペロブスカイト結晶のハロゲン欠陥回復を行った。蛍光寿命測定により結晶のハロゲン欠陥回復における結晶形状依存性について検討した。ペロブスカイトマイクロ結晶におけるハロゲンアニオン欠陥の回復速度および蛍光寿命の増加量は結晶のアスペクト比ではなく、比表面積の大きさに依存するということを明らかにした。この研究に基づいた論文を、Advanced Optical Materialsに投稿し、一度目の査読を経て再投稿した。また、受入研究室の学生との共同研究により、連続波レーザーの光圧を利用したハロゲンアニオン種の局所濃縮によるハロゲン欠陥回復およびヨウ素アニオンとのハロゲン交換反応について得られた成果に基づいた論文はAdvanced Materials Technologiesに掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題の1つであるペロブスカイトの結晶-結晶間または結晶-分子間の反応機構を解明する上で、10 ナノ秒以上の蛍光寿命を示すペロブスカイト結晶が必要である。しかし、ペロブスカイト結晶はハロゲン欠陥による非放射再結合過程のため蛍光寿命が短くなる。そこで、ハロゲン欠陥の少ないペロブスカイト結晶の形成に向けてペロブスカイト結晶のハロゲン欠陥回復における結晶形状依存性について検討した。ハロゲン欠陥回復によってプレート状およびロッド状のペロブスカイト結晶の蛍光寿命を30-40倍程度増加することができ、ハロゲン欠陥の回復速度および蛍光寿命の増加量は結晶のアスペクト比ではなく、比表面積の大きさに依存するということを明らかにした。単一結晶-色素分子間のエネルギー移動機構の解明に向けて、当初は単一ハロゲン組成のペロブスカイト結晶を用いる予定であったが、エネルギー移動に利用可能な色素分子の候補を増やすためハロゲン混合ペロブスカイト結晶の合成を検討することで結晶の蛍光波長選択の幅を広げることができた。さらに、ハロゲン交換反応に向けたハロゲン組成の異なるペロブスカイトナノ結晶の合成に関しても、配位子支援再沈殿法(LARP法)およびホットインジェクション法により、ハロゲン組成の異なるペロブスカイトナノ結晶を合成し、粒径の均一化と安定性の向上に向けたナノ結晶生成法の方針を確立した。また、受入研究室の学生との共同研究にて、連続波レーザーの光圧を利用したハロゲンアニオン種の局所濃縮によるハロゲン交換反応に関する成果をAdvanced Materials Technologiesにて発表した。さらに、ペロブスカイトナノ結晶の凝集状態に依存した蛍光特性制御に関する成果の論文を投稿した。以上の理由により、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「単一結晶-色素分子間のエネルギー移動機構の解明」および「ハロゲン交換反応が起こるナノ結晶間距離の閾値の解明」、そして「ダブルビーム照射系における捕捉物質の濃度勾配の形成条件の最適化」を達成するため、次の三つの研究を行う。第一に、ハロゲン混合ペロブスカイト結晶-色素分子間のエネルギー移動機構を調べる。ハロゲン混合ペロブスカイト結晶の蛍光減衰曲線を測定し、色素分子の有無による変化を評価する。また、結晶の蛍光スペクトルと色素分子の吸収スペクトルの重なりの有無によりエネルギー移動過程の比較を行うことで得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。第二に、受入研究室のレーザー照射実験系を用いて、化学合成したナノ結晶のハロゲン交換反応の追跡を行う。ハロゲン組成の異なる2種のナノ結晶が分散した溶液にレーザーを集光してナノ結晶を局所的に濃縮する。顕微蛍光測定を行い、捕捉されたナノ結晶のハロゲン組成と粒子濃度を評価する。光圧によるナノ結晶の濃縮がうまくいかない場合は、それぞれのナノ結晶を保護する有機リガンドの光重合により、ナノ結晶同士が有機リガンドの長さだけ離れている集合構造を形成し、結晶間のハロゲン交換反応を追跡する。有機リガンドの構造や分子長の違いによってナノ結晶間のハロゲン交換反応を制御し、反応が起こる粒子間距離の閾値を明らかにし、得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。第三に、受入研究室のレーザー照射実験系に空間分割波長板によって形成したラゲール・ガウスビームを導入し、ダブルビーム照射系を構築する。光強度およびビーム径の最適化により捕捉物質の濃度勾配の形成条件を決定する。バルク結晶ならびにナノ結晶の形態や元素組成、そして結晶構造の評価は北海道大学ナノテクノロジープラットフォーム/オープンファシリティの共用機器を利用する。
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Research Products
(6 results)