2020 Fiscal Year Annual Research Report
海底地すべり起因の土石流の流動機構の解明:流れの遷移を考慮した統一モデルの開発
Project/Area Number |
20J00991
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 佑一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 堆積物重力流 / 水中土石流 / 混濁流 / 海底地すべり / 流れの遷移 / 数値モデル / 浅水流方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、海底地すべりに起因して発生する土石流のダイナミクスを水槽実験より明らかにし、それに基づき数値モデルを開発することを目的とする。本年度は砂質土石流(粘土含有率が比較的少ない土石流)を対象とした予備実験と数値モデルの構築を行った。 予備実験では砂質土石流が流れを維持できる水路勾配について検討した。その結果、砂粒子の安息角以上の勾配では定常的な流れが形成されるのに対して、安息角以下の勾配では流れを維持することはできず、短い流下距離ですべて堆積した。実際の堆積物が存在する安息角以下の勾配において、流れをある程度維持するためには初期の堆積土砂を液状化させることや粘土を含有させる必要があると考えられる。 予備実験と並行して、砂質土石流のダイナミクスを表現する数値モデルを構築した。土石流から混濁流の生成・その後の分離までを表現するため、二層浅水流モデル(下層は土石流、上層は混濁流)を使用した。土石流層から混濁流層への湧き出しは、土石流層からの砂の堆積速度とカップリングできると仮定することでモデル化した。このモデル化は従来にはない新しいものであり、仮定の妥当性は今後の実験によって検証する予定である。 構築した数値モデルを用いて、単純な一様勾配斜面での堆積過程を対象とした予察的な計算を行った。その結果、初期の土石流から混濁流の生成・分離を表現できた。急勾配のときは基本的に土石流が先行し、土石流から砂がすべて堆積し土石流が停止した後に混濁流が分離するのに対し、緩勾配では土石流が停止する前に混濁流が先行し、分離することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は初年度ということで主に実験準備・予備実験を行う予定であったが、新型コロナウイルスによる大学の立ち入り制限のためスタートが遅れた。そのため、本研究の核となる実験の進捗状況は想定したよりも遅れている。一方、数値モデルの構築は想定以上に進展しており、構築したモデルをもとに予察的な数値実験を行うこともできた。実験で予定よりも遅れが生じているものの今後につながる成果が得られており、次年度以降の進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度構築した砂質土石流に対する数値モデルを検証するための実験をメインに行う予定である。実験では初期堆積物における粘土の含有率を変化させたものを実験条件として与え、粘土の含有量と土石流のダイナミクスの変化について検討する。実験により得られた知見を踏まえ、数値モデルを泥質な土石流にも適用できるように拡張する。
|
Research Products
(9 results)