2021 Fiscal Year Annual Research Report
Structural balance in international relations: Is the enemy of my enemy my friend?
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20J01060
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大石 晃史 青山学院大学, 国際政治経済学部, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 構造バランス / 間接互恵性 / ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
構造バランス理論について微視的なダイナミクスと巨視的な帰結の関係を理論的に分析した。間接互恵性モデルを符号付き有向グラフにおける構造バランスモデルとして捉え、ネットワーク構造とマクロな二極化傾向の関係を数値計算で調べた結果、ネットワークの密度によって二極化の程度に吸収状態相転移が見られることが分かった。つまり、構造バランス理論に対応した秩序変数を導入し、その挙動を観察した結果、完全に二極化した吸収状態へ到達する相と、完全には二極化しない準安定状態に留まる相があることが明らかになった。これは、構造バランス理論のマクロ的な帰結がその基盤となるネットワーク構造によって大きく影響を受けることを示している。また平均場近似解析によって相転移の存在を裏付けるとともに、完全に二極化しない理由として4者間の不完全なモニタリングによる意見の不一致があることも確認された。これらの研究成果は投稿論文として学術雑誌Physical Review Eに掲載された。 その一方で、国際社会の敵対・友好関係ネットワークについての補完的なデータとしてアクター自体の変遷についてデータ構築を行った。特にデータ構築のパイロット実験として中央アフリカ共和国の非国家主体の離合集散について二次資料を収集・分析することで新規データの構築を行った。近年の中央アフリカ共和国内戦は詳細なデータの乏しい紛争の1つであり、今回のデータ構築はネットワーク分析の視点のみならず紛争事例研究としても大きな意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造バランス理論について間接互恵性モデルを解析することによって、これまで明らかになっていなかったネットワーク構造とマクロな二極化傾向との関係を見出すことができた点は大きな進展であったと考えられる。現実の構造バランス的な相互作用が全て間接互恵モデルと同一に展開する訳では当然ないが、単純な符号付き無向グラフのモデルに比べてバランス化・非バランス化のミクロメカニズムが(行動、観察、意見更新という根拠があるという意味で)明確で、このモデルで構造バランスについての相転移が確認・解析できたことには大きな意義がある。また中央アフリカ共和国に関するデータも学術的な意義が大きいもので解析の応用範囲も広い。以上のことから順調な進展を得たと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究の進展の中では国際社会のネットワークについて安全保障面や理論面に焦点があたる部分が多かったが、経済的な側面についての分析もそれを補完する形で追加されるのが望ましいと考えられる。また、アクターの離合集散についてのデータ構築も中央アフリカ共和国に限定せず、より広汎に行うことで、国際社会の敵対・友好関係ネットワークの時間発展を実データからより正確に理解することができるだろう。よって、開発援助や国際貿易のような経済的ネットワークについての分析、および、中央アフリカ共和国以外の事例におけるアクターの離合集散データ構築を行う予定である。
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