2020 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルジェネティクスによる植物の細胞極性形成機構の解明
Project/Area Number |
20J01129
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉成 晃 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞極性 / シロイヌナズナ / 受容体 / ケミカルジェネティクス / 化合物スクリーニング / BOR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞極性の形成は多細胞生物の発生、生育、そして環境応答に必須であり、植物においても様々な極性軸に基づく細胞極性が存在することが知られている。しかしながら、細胞極性を制御する分子機構については不明な点が多い。この理由として、細胞極性の形成が胚発生において重要なプロセスであること、遺伝子重複による変異体獲得の困難さ等が挙げられる。本研究では、ケミカルジェネティクスによって、変異体スクリーニングでは獲得できなかった細胞極性を司る遺伝子群を同定し、植物において細胞極性を形成し維持するメカニズムを明らかにするものである。 現在までに、約7,300種類(目標の18.3%)の小分子化合物のスクリーニングを終えており、BOR1やNIP5;1の極性局在パターンを変調するヒット化合物として2種類の分子を同定している。これらの分子については、標的タンパク質を同定するための実験を行っている。 また、細胞層特異的な極性局在パターンを示すユニークな受容体様キナーゼを新たに発見し、この受容体様キナーゼの極性局在を制御する分子機構についての解析も始めた。この受容体様キナーゼの一部のアミノ酸配列を削った変異体を複数種類作製し、これらの細胞内局在を解析した結果、キナーゼドメイン近傍のドメインが内皮細胞層特異的な中心柱に向かった極性局在パターンに重要であることがわかった。質量分析によってこのドメイン内の翻訳後修飾を網羅的に解析したところ、リジン残基のユビキチン化とセリン残基のリン酸化が検出された。現在、これらの翻訳後修飾が、細胞層特異的な極性パターンのスイッチとして機能していると仮説を立てて検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
BOR1-GFPを細胞極性マーカーとして、細胞極性を変調する化合物をスクリーニングしている。現在までに約7,300種類の小分子化合物のスクリーニングを終えており、BOR1-GFPの極性パターンを変調する化合物を2種類獲得している。また、細胞極性マーカーとなりうる機能未知の受容体様キナーゼを同定した。この受容体様キナーゼは、細胞層特異的な極性局在パターンを示すことから、植物細胞における膜タンパク質の「極性スイッチ」機構のモデルとしても用いることができる。現在までに、この受容体様キナーゼの極性パターンに重要なドメインを同定し、このドメイン内の翻訳後修飾を、質量分析によって同定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在進めている化合物スクリーニングを継続するととともに、ヒット化合物の標的タンパク質を同定する。また、新たに発見した受容体様キナーゼの極性パターンを制御する仕組みと生理的機能を明らかにするため、アミノ酸置換変異の導入、相互作用因子の同定、変異体の獲得を行う。また、受容体様キナーゼの部分配列(ドメイン)が極性パターンに関わっていることから、このドメインがタンパク質の動態にどのような影響を与えるのかを、コンピュータシミュレーションによって明らかにする。
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