2021 Fiscal Year Annual Research Report
基部陸上植物を用いてガス交換系の発生と応答を統合的に解明する
Project/Area Number |
20J01187
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
相原 未耶 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞間隙 / 細胞壁 / ガス交換 / 器官発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物のガス交換を理解するためには、間隙と孔を一つのユニットとする「ガス交換系」として解析することが必須である。孔については、これまで被子植物の気孔について発生と応答が各々研究されてきたが、より詳細な理解のためには発生と応答を包括的に解析する必要がある。本研究では、ゼニゴケの特徴であるハイスループットなスクリーンニング系を生かして、間隙形成の仕組みに加えて孔の発生と応答を統合的に理解することを目指す。さらに、シロイヌナズナと比較を行うことで、ゼニゴケ特異的な現象にとどまらず、陸上植物に共通する現象として理解できるだけでなく、長らく研究されてきた被子植物にとっても新たな知見が得られると期待される。 植物の間隙とそれにつながる孔は効率的なガス交換系として機能する。本研究では、間隙と孔の発生、孔の開閉という発生と応答を統合的に理解することを目指して研究を行う。材料として、間隙を失っても生育することを既に明らかにした苔類ゼニゴケを用いる。本研究の目的は、これらの特性を生かして、ガス交換系を構成する間隙と孔の発生の分子機構、孔の開閉制御の分子機構を解明すること、ガス交換系について、 発生と応答の分子機構を組織全体として明らかすることである。 前年度までには、スクリーニングにより複数の間隙と孔の変異体を単離した。このうち、間隙形成を抑制している因子については、過剰発現体の作成により間隙形成が抑制され、発現量によって間隙密度を調節できる可能性が高まった。今年度は、ノックアウト株の作成に加えて、既知の間隙形成因子との二重ノックアウト株を作出し、間隙形成経路中での機能解析やシロイマナズナでの機能の解析などを行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、初年度から引き続いて行って来た順遺伝学的スクリーニングを継続して行った。その結果、新たに気室の間隙形成を抑制する因子を単離した。この因子について発現の強度が異なる2種類のプロモータを用いてゼニゴケにおいて発現させたところ、発現の強度に応じて、間隙の形成密度が変化することが分かった。次年度に行う予定である、二重ノックアウト株の作成や既知の因子との相互作用解析のための株の作成なども進行中である。その他にも複数の間隙形成や孔の形成に異常を示す株が単離でき、次世代シーケンサーによる原因遺伝子の単離が進行中である。 維管束植物の気孔で開閉が制御されることが分かっている化合物や、初年度の化合物スクリーニングでゼニゴケの孔の形成を制御する可能性のある化合物を処理した際の蒸散量や表面温度の変化を観察するためのサーモグラフィーや蒸散測定装置における測定も条件検討が完了しつつあり、順調に進行している。 以上のことから、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
単離した間隙や孔の異常株について、前年度に引き続いて、次世代シーケケンサーを用いた原因遺同定を引き続いて進める。 現在までに単離した間隙形成因子について、既知の間隙形成因子との2重ノックアウト株を作出し、既知の因子との関係を明らかにする。それぞれにタグを付加した配列を導入した株を作出し、相互作用の有無を確認する。相同性のあるシロイヌナズナの因子におけるノックラウト株をリソースセンターからとり寄せて、表現型を観察する。 応答の解析については、維管束植物の気孔で開閉が制御されることが分かっている化合物や、初年度の化合物スクリーニングでゼニゴケの孔の形成を制御する可能性のある化合物を処理した際、また維管来植物で明らかになっている条件での蒸散量や表面温度の変化をサーモグラフィーや蒸散測定装置によって測定する。 これらの結果をふまえて、新たな間隙形成経路や孔の応答のしくみの理解を目指す。
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