2021 Fiscal Year Annual Research Report
半線形楕円型方程式の定性解析-安定性が導く新潮流-
Project/Area Number |
20J01191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷川 翔一 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 動径対称解 / 層構造 / 交差 / 安定性 / Joseph-Lundgren 指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は, 一般の半線形楕円型方程式に対し, 解の安定性を用いて, 関連する定性的性質を導出することを目的としている. 研究課題一年目では, 非線形項を具体的に設定した半線形楕円型方程式を対象に, 研究の土台となる解の安定性・不安定性に関する解析を行った. 二年目となる本年では, 一年目で扱った方程式に対して, さらに動径対称解の安定性や関連する性質を調べることを目的に研究を行った. 具体的には, 非コンパクトなリーマン多様体上の Lane-Emden 方程式を対象として, 動径対称解同士の交差・非交差に関して研究を行い, 結果を得た. 以下, 研究の背景と内容を説明する. Lane-Emden 方程式に対して, ユークリッド空間上では既に, 任意の動径対称解同士の交差・非交差に関して結果が得られている. 一方で, 扱う空間をユークリッド空間から非コンパクトなリーマン多様体に拡張して際には, 原点での値が十分小さいという仮定の下では, 任意の動径対称解同士が非交差となるという結果が得られていた. しかし, 仮定を除いた際の動径対称解同士の交差については調べられておらず, 任意の動径対称解同士の交差・非交差に関してはオープンプロブレムとして挙げられていた. 本研究では, 双曲空間を含む非コンパクトなリーマン多様体を対象に, Lane-Emden 方程式の任意の動径対称解同士の交差・非交差を調べ, 非線形項の冪の指数による解構造の変化を明らかにした. 具体的には, 非線形項の冪の指数が Joseph-Lundgren 指数に関して優臨界である場合には任意の動径対称解同士は非交差であり, 劣臨界である場合には閾値となる動径対称解の原点での値が存在することを示した. 特に, 得られた結果により, 先のオープンプロブレムに対して肯定的な答えを与えることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は, 一般の半線形楕円型方程式に対し, 解の安定性を用いて関連する定性的性質を導出することである. 研究課題二年目では, 非線形項を具体的に設定した半線形楕円型方程式を対象に, 動径対称解の安定性や関連する性質を調べることを目標としていた. 現在までの進捗状況を研究計画に沿って説明する. 本年では, 特に非コンパクトなリーマン多様体上の Lane-Emden 方程式に対して, 動径対称解同士の交差・非交差を中心に研究を行った. 特に, 非線形項の冪の指数が Joseph-Lundgren 指数より大きい場合には, 動径対称解同士が非交差となる結果を用いて, 動径対称解の安定性も導出しており, 本年度の目標であった「動径対称解の安定性や関連する性質を調べる」ことを達成した. また, 方程式を扱う空間を双曲空間を含む非コンパクトなリーマン多様体に一般化して, 結果を得ることに成功した. 本研究は, 最終的には一般の半線形楕円型方程式への拡張を計画してることから, 本研究課題全体としても進捗があったと考えている. 一方で, 本年は動径対称解の無限遠方での漸近挙動に関しても解析を行う予定であったが, 本内容に関しては結果を残すことができなかった. 来年度には, 引き続き本内容も対象に研究を推進していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 解の正値性について研究を行う予定である. 特に, 動径対称解に関しては既存の関連する研究の蓄積が多いことから, まずは動径対称解に着目して安定性と正値性の関係を調べ、その後で解の対称性を課さずに結果の導出を行うことを目指す. 動径対称解の正値性に関しては, 先行研究において, 解の安定性を測る指標の一つである Morse 指数と零点の個数との関連を示す結果がいくつか得られている. 例えば, Harrabi-Rebhi-Selmi (2011) では, 適切な条件を課した半線形楕円型方程式に対して, 動径対称解の零点の個数は Morse 指数から 1 を引いた数に一致することを示した. この結果では, まず零点の個数に対応して, 動径対称解が一意に存在することを証明した後に, Sturm-Liouville の比較定理等の常微分方程式の理論を用いて解析を行っている. 従って, 本研究においてもまず零点の個数に応じて, 動径対称解が存在するかを調べた後に, 必要な解析を行う予定である. また, 次年度は研究課題の最終年度であることから, 課題のとりまとめとして, 扱う方程式や空間の一般化にも着目して研究を行う.
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Research Products
(4 results)