2020 Fiscal Year Annual Research Report
時間次元におけるヒトの探索・隠蔽方略の包括的な解明
Project/Area Number |
20J01204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 資浩 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 探索・隠蔽方略 / メタ認知 / 時間次元 / 視覚探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の視覚探索研究は,探す過程に注目してきたが,現実では隠すことも重要である。本研究は,ヒトを対象とした探索・隠蔽方略を明らかにする上で,従来の空間次元での検証に留まらず,新たに時間軸を導入した事態で,以下の三つのプロジェクトを遂行することを目的とした。一つ目は,従来のモノの探索・隠蔽方略をモノ以外に発展させることであった。二つ目は,方略の学習とその年齢関連差を検討することであった。三つ目は,相手の主観的印象が方略に及ぼす影響を検証することであった。そして,従来の基礎的な枠組みを超え,現実に想定される複雑な事態における探索・隠蔽方略の知見を提供することが最終目標である。 2020年度に関しては,主にプロジェクト1と2を遂行する予定にあったが,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,大きな進展を果たすことはできなかった。ただし,一部の予備実験は進められており,新環境での実験実施についてノウハウは得た。また,プロジェクト2における年齢関連差の検討については,新型コロナウイルス感染症拡大の観点から,来年度以降の実施も難しいことが考えられる。その一方,プロジェクト3に関わる実験を開始し,基礎的な枠組みを構築することができた。具体的には,金銭報酬を用いた操作を探索・隠蔽課題に導入した。その結果,金銭報酬が低い条件においては従来の方略と変わらなかった。ただし,重要なことに,金銭報酬が高い条件においては従来の方略において選択されやすかったアイテム(探す・隠す候補となるモノ)の選択率が低下し,逆に,選択されにくかったアイテムの選択率が高まった。これは,金銭報酬が探索・隠蔽方略に影響を及ぼすことを明らかにした初めての知見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3つのプロジェクトから構成されている。1つは,従来のモノの探索・隠蔽方略をモノ以外の探索・隠蔽方略に発展させることであった。2つ目が,探索・隠蔽方略の学習とその年齢関連差について検討すること,3つ目が,探索・隠蔽の相手に対する主観的印象が方略に及ぼす影響を明らかにすることであった。令和2年度は,主にプロジェクト1と2を遂行する予定にあった。一部の研究は進められたが,新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,実験実施期間が限られ,計画していたほどのデータを収集することはできなかった。ただし,実験環境については,東京大学の被験者募集システム等を含めて構築が進められた。また,当初の予定にはなかったが,プロジェクト3に関わる実験を開始し,基礎的な枠組みを構築することができた。その際,オンラインでの実験を実施しており,新しい実験用ソフトウェアのノウハウも習得した。その一部のデータについては,令和3年度の日本心理学会にて発表を行う予定である。最後に,本研究課題のプロジェクト,及び,派生プロジェクトについて対外向けに多くの進捗があった。具体的には,原著論文が国際ジャーナル及び国内ジャーナルで計3本採択・掲載され,学会にて3回の主発表を行った。また,前年度内定していた1件の学会賞を受賞し,本年度も新たに1つの学会賞の内定を受けた。以上より,進捗状況としておおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,プロジェクト1及び2を遂行する。プロジェクト1では,使用する刺激のデータベース化,新実験パラダイムの構築,エピソードの属性に着目した検討へと段階的に進めて行く。プロジェクト2は,R2年度に実施した研究を継続する。前年度は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により,実験が実施できない期間があり,実施可能になってからも,研究室に入室できる人数の抑制などの様々な制限が設けられ,予定よりデータの収集が進まなかった。その代わりに,実験環境の構築は十分に達成できたために,本年度は実験の実施に尽力する。ただし,実験を実施する際には,COVID-19の感染拡大防止について十分な配慮をする。
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Research Products
(9 results)