2020 Fiscal Year Annual Research Report
細胞メタボロミクス解析を用いたイネの高温不稔抑制メカニズムの解明
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20J01211
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
畠山 友翔 愛媛大学, 大学院農学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 高温不稔 / 窒素追肥 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,開花期の高温に強い耐性を持つとされ,高温不稔の研究に広く用いられてきた「N22」よりもさらに高い高温耐性を持つ水稲品種が選定された.そのため,今後はそれらの品種を用いる事で,高温不稔の発生,抑制メカニズムの解明がより進展すると期待される.本年度では,開花期高温に強い水稲品種「N22」と高温に弱い「ヒノヒカリ」に加え,近年「N22」以上の高温耐性を持つ事が見出された水稲品種「Kalheenati」および「宝満神田稲」を供試材料とし,開花直前の花粉粒および柱頭細胞を対象にピコリットル・プレッシャープロー ブ・エレクトロスプレーイオン化質量分析法(picoPPESI-MS)によって代謝産物分析を行った.その結果,糖,有機酸,アミノ酸,脂質等200ほどの代謝産物を1細胞レベルで検出,同定する事に成功した.またそれらの代謝産物の中で,高温耐性に関与すると思われる代謝産物をいくつか見出した. また本年度は,高温不稔を抑制する栽培技術の開発を目指し,窒素追肥時期の違いが高温不稔発生に与える影響を調査した.圃場で栽培したイネを開花直前にポットへ株上げし高温処理を行う事で,より圃場に近い条件で試験を行った.その結果,出穂20日前および10日前の追肥は高温不稔を抑制する可能性が示唆され,今後の高温不稔を抑制する栽培技術として期待された.さらに同試験から,上位に着生した1・2次籾の高温感受性が高い事,開花までの高温処理時間が長いほど不稔が多く発生することが示唆された.この高温不稔に対する窒素追肥の影響についての成果をまとめ,日本作物学会講演会にて発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高温不稔の発生および抑制メカニズムを解明する上でも,また高温不稔を抑制する栽培技術の開発を進める上でも有益な知見を得る事ができた.さらに後者の結果をまとめ学会発表を行った事から,評価を「期待通り研究が進展」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に取得した代謝産物データの解析と15Nの分析・解析を進める.また,令和2年度に立ち上げた光学顕微鏡,透過型電子顕微鏡による細胞内微細構造の観察を行う.今後は光合成や茎内非構造性炭水化物といったソース能に着目し,高温不稔との関係を明らかにする予定である.また,高温不稔を抑制する栽培技術の開発を目指し,追肥時期に加え追肥量が高温不稔発生に与える影響を調査する.
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