2020 Fiscal Year Annual Research Report
精密なゲル設計に基づき薬物の長期徐放を実現する非膨潤インジェクタブルIPNゲル
Project/Area Number |
20J01344
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 昇平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | インジェクタブルゲル / 非膨潤ゲル / テトラポリエチレングリコール / 薬物除法 / 相分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、臨床応用へ支障をきたす”ゲル膨潤”に着目し、その障害を伴わないゲル足場の設計を行う。水を多く含む高分子ゲルは、ゲル内外の浸透圧差に基づき膨潤する。その膨潤挙動は生体置換材などの足場として用いる場合、圧迫障害などの重度の医療障壁となるが、未だにその膨潤を抑制する概念の根本的解決策は企てられていない。一般的に、疎水性高分子や温度応答性高分子などとの複合混合によりゲル膨潤を抑制可能だが、本課題においては追加の添加物を加えずに、膨潤に反する収縮現象を発現可能なポリエチレングリコール(PEG) ゲルを開発した。本PEG ゲルは、二液を混合するとゾルからゲルへと転移し、均一な網目構造を形成する。特定濃度以下で作成したPEG ゲルを純水に浸漬させると膨潤挙動を示さず収縮し、結果的に形成するゲルは白濁するとともにメソスケールの構造形成が確認された。この白濁挙動は、ゲル化に伴う相分離であり、ゲル収縮に伴う”gel to gel” 相分離であると考えられる。この一連の相分離現象は、濃度揺らぎの増加に伴う高分子網目の局在化であると考えられ、網目の不溶化を伴うことが示唆される。さらに本相分離構造は、PEG の相転移温度以上になると消失し、室温に戻すと再度その構造が観察されたことから、相分離構造が凍結されているのではなく、自由に形成されることが示唆された。本計画の達成により、ゲル収縮を基発とする足場材料への展開が期待される。さらに、PEG ゲルに細胞を高生存率で包埋可能な基盤技術の確立にも成功し、本相分離ゲルに細胞を包埋することもかのである。また、本課題の最終目標であるゲルの機能化も達成しており、薬物除法システム構築に向け着実に研究が進歩している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の第一目標である”ゲルの非膨潤挙動”を発現させることができ、それに伴う高分子ゲルの新たな相分離挙動を発見したため。本相分離現象の発展により、新たな学問分野への展開が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本課題の第二目標である”薬物のスローリリース”を実現する。主な方策は2種考案しており、①ゲル前駆体への薬物導入、②ダブルネットワーク化による薬物導入である。①は当初の計画であり、ゲルの分解に伴う薬物の除法が期待される。②はゲルの機能化を伴う計画であり、①の計画が達成され次第、推進していく。
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