2021 Fiscal Year Annual Research Report
次世代マウスモデルおよび患者由来オルガノイドを用いた膵癌の新規治療標的の探索
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20J01362
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西川 義浩 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特別研究員(PD) (80802785)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 膵癌 / Hes1 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は本邦における悪性腫瘍死亡原因の第4位を占める最難治癌の一つであり、その病態解明と新規治療法の開発が急務となっている。膵癌は多数の遺伝子異常の蓄積により多段階的に発癌することが知られており、なかでもKRAS遺伝子変異は極めて重要な役割を担うと考えられているものの、その詳細な分子メカニズムには未だ不明な点が多い。 申請者らは、これまでに膵癌マウスモデルおよび細胞株を用いた研究により、Hes1が変異Krasによる膵発癌(initiation)において重要な役割を果たすことを明らかにした。しかしながら、これまでの研究は、膵発癌におけるHes1の役割を明らかにしたのみであり、形成された膵癌におけるHes1の役割は不明であった。 そこで本研究では、新規マウスモデル及び、オルガノイド培養を用いることで、膵癌の進行・維持におけるHes1の役割を明らかにし、膵癌の新しい治療標的を探索することを目的とした。 令和2年度までの研究で、Hes1がPanINのinitiationにおいて腫瘍促進的な働きを行うものの、膵腫瘍形成のprogressionにおいてむしろ逆であり、膵腫瘍形成のphaseによってHes1の果たす役割が異なる可能性が示唆された。 そのため、令和3年度は、(1)マウス膵癌(転移)におけるHes1の役割の検討をin vivoで検証する、(2)マウス膵癌におけるHes1の標的遺伝子の同定を試みることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は膵腫瘍形成のphaseによってHes1の果たす役割がどのように異なるか、またそのメカニズムを明らかにすることを目的に、下記の検討を行った。 (1)マウス膵癌(転移)におけるHes1の役割の検討:前年度に膵癌マウスモデルより作成した、Hes1野生型およびノックアウトした膵癌細胞株をC57BL/6マウスの脾臓に注入することで、肝転移モデルを作成し、Hes1の肝転移における役割を検討した。Hes1ノックアウト膵癌細胞で肝転移の増大を認め、肝転移においてHes1の欠損が促進的に働くことが示唆された。 (2)マウス膵癌におけるHes1の標的遺伝子の同定:上記Hes1野生型およびノックアウトマウス膵癌細胞株からRNAを抽出し、RNAシーケンスを行うことで、Hes1の標的遺伝子の探索を行った。 RNAシーケンスにて有意な変動を認めた遺伝子群からMuc5acに着目した。ChIPアッセイを行ったところ、Muc5acのプロモーターをHes1が直接制御している可能性が示唆された。Hes1がMuc5acを制御することが膵癌の悪性度の決定に重要であるか、現在更に解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、上記のマウス膵癌由来細胞株の解析を進め、(1)Hes1がMuc5acを介した悪性度の制御のさらなるメカニズムの解明を、in vivo・in vitroのモデルを用いて試みる。(2)加えて、ヒト膵癌においても同様の事が生じているか、ヒト膵癌の臨床データなどを用いて検証する。(3)さらに、得られた知見をヒト膵癌の治療に応用可能であるか検討する。
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Research Products
(1 results)