2020 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴うレジスタンス運動抵抗性の分子基盤解明-筋原線維に着目した検討-
Project/Area Number |
20J01393
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
阿藤 聡 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 加齢 / 骨格筋 / 運動抵抗性 / タンパク質合成 / 筋原線維 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、加齢によるレジスタンス運動による筋肥大適応応答の低下機序を明らかにすることを目指し、筋タンパク質合成と筋原線維形成機構に着目して検討を行っている。 本年度は加齢が運動による合成タンパク質の組成に及ぼす影響を簡便に評価する方法を構築するため、in vivo SUnSET法(抗生物質puromycinによって新規翻訳鎖を標識する方法)を応用した新規翻訳産物回収法を試みた。具体的にはpuromycin標識化ペプチドを免疫沈降法によって回収し、westernblot法にて定性評価可能にすることを目指した。無細胞の翻訳系では低濃度(0.04μM)のpuromycinは伸長中の翻訳鎖のc末端に選択的取り込まれることが報告されていることからin vivo SUnSETにおいても同様の現象が起こると考えていた。しかしながら、in vivo SUnSETで標識された翻訳鎖中で完全長あるいはそれに類するタンパク質を検出することは出来なかった。このことからin vivo SUnSETによって標識された翻訳鎖は本来のペプチドよりも小さいフラグメントになっている可能性が示唆された。 また、筋原線維機構に着目した検討に関しては、我々が加齢マウス骨格筋においてタンパク質量の減少を観察したアクチン重合因子N-WASPの機能解析を進めた。具体的にはN-WASPノックダウンベクターを作成し、若齢の雄性C57BL/6Jマウスを対象に表現型を観察した。shRNA発現ベクターによる2週間のN-WASPノックダウンによって骨格筋量の変化は認められなかったが、経皮電気刺激による下腿の足底屈トルクは有意に低値を示した。このことからN-WASPは安静骨格筋における筋収縮機能に関連している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨格筋中の翻訳タンパク質の定性評価方法については方法論について別のアプロ―チを検討する必要があるが、N-WASPの機能解析については運動抵抗性因子としての可能性を示唆する結果が得られたことから本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋中の翻訳タンパク質の定性評価方法はタンパク質の標識方法をclick chemistryに変更して方法論の構築を継続する。click chemistryはpuromycinとは異なりアミノ酸の構造類似体であるため(puromycinはaminoacyl tRNAの構造類似体)、完全長のペプチドに取り込まれるものと考えられる。 また、N-WASPの機能解析については、収縮による筋肥大応答に及ぼす影響について検討を進める。
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