2021 Fiscal Year Annual Research Report
競技者に対する貧血・鉄欠乏予防のための栄養戦略-ケトン食に着目して-
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20J01428
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚本 彩 東京大学, 東京大学大学院 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 鉄代謝 / 中鎖脂肪酸 / 競技者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、競技者に対する貧血・鉄欠乏予防のための栄養戦略を立案することである。この目的を達成するための栄養素として中鎖脂肪酸に着目し、これまでに動物実験とヒト実験を実施してきた。これまでに、競技者における中鎖脂肪酸の摂取に関する報告は限られており、鉄代謝に及ぼす影響も不明である。鉄代謝に対して、中鎖脂肪酸の有効性が確認できれば、本研究の終着点である、競技者に対する貧血・鉄欠乏予防のための栄養戦略を構築することが期待できる。 今年度は、実業団に所属する男子ラグビー選手30名を対象にフィールドベースの実験を実施した。対象選手のうち、中鎖脂肪酸(18g/日;ゼリータイプ)を2ヶ月間毎日摂取する中鎖脂肪酸摂取群とコントロール群の二群に分類し、介入期間前後の安静時の血液検査を実施した。その結果、鉄栄養状態を反映する項目(血中ヘモグロビン濃度、血清鉄濃度、血清フェリチン濃度)については、両群ともに有意な変化は認められなかった。一方で、鉄を調整するホルモンであるヘプシジン(肝臓から分泌される鉄調節ホルモン)の分泌については、中鎖脂肪酸摂取群の安静時において介入後に有意な減少が認められた(p < 0.05)。しかしながら、運動後のヘプシジンの変化を評価することができず、運動に対する中鎖脂肪酸の影響は明らかにすることが出来なかった。加えて、生体内において、鉄は腸から吸収されることから、腸内環境の改善は、貧血の予防にも貢献する可能性がある。本研究の結果を踏まえて、2022年度のヒト実験を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響により、2020年に実施予定だった介入研究の実施を見送り、フィールドベースの実験を実施した。2022年に、本研究の結果を踏まえて、ヒトを対象とした介入研究を実施する予定になっている。研究計画に一部変更があったものの、概ね順調に進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施した研究課題においては、フィールドベースの実施であり、パフォーマンスの評価などの実施が出来なかった。そのため、2022年度では研究室ベースの介入実験を実施する予定である。加えて、2020年度実施した動物実験の解析を完了させ、その結果を2022年度中に論文として国際誌に投稿する予定である。
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