2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms for the coevolution of obligate pollination mutualism
Project/Area Number |
20J01453
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有本 晃一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 共進化 / 絶対送粉共生系 / 生物間相互作用 / 被食ー捕食関係 / イチジク属植物 / 防御形質 / 分類 / 系統 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、イチジク属植物とイチジクコバチ類の間に見られる絶対送粉共生において、その両者の形態や遺伝子情報の解析を実施すると同時に、天敵相と天敵に対する防御形質の関連を調査することで、共生系を中心とした生物間相互作用が共進化に与える影響を評価し、植物と昆虫の共進化機構を解明しようとしている。 2021年度は、2020年度に引き続き海外調査は行わず、国内の沖縄諸島や石垣島においてイチジク属植物とイチジクコバチ類、その天敵相のサンプリングを行った。これまでイチジクコバチ類の天敵に関しては、アリ類やクロツヤバエ類がメインであると認識し、多様性解析や分類学的研究を行ってきたが、一連の野外調査を通じて、他にもタマバエ類やノミバエ類、ケシキスイ類が天敵もしくはイチジク属植物を利用する競争者として大きな役割を担っていることが明らかになってきた。 タマバエ類は特定のイチジク種上では非常によく観察され、少なくとも6種が確認されており、全てが未記載種でありかつ未記載属も含まれていることが判明した。同じハエ目であるクロツヤバエ類も特定のイチジク種上でしか見られないが、一方ノミバエ類はほとんどのイチジク種で確認され、幼虫がイチジクコバチを捕食することも観察された。ハエ目の中でもグループによってイチジク上での多様性が異なり、また絶対送粉共生系に与える影響も異なっていると考えられる。 アリ類に関しては、2021年度にデータ量を大きく増やすことができたが、それまでに得られていた結果の傾向と大きく変わらず、イチジクの生育環境やイチジクの花嚢の性質などによってイチジク上で確認される種数や種構成、個体数に違いが見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、引き続き海外調査は行わず国内での調査に終始したため、海外産種のデータが全く増えなかったという点では計画は後退したままであった。しかし、国内調査をより密に行えたことで、これまであまり注目していなかった天敵昆虫の存在が明らかとなり、イチジクコバチ類の生存に負の影響を与えている可能性も明らかとなり、研究開始当初に予想していなかった側面での研究の進展があった。よって、2021年度は計画の大幅な変更は続いているが、イチジク絶対送粉共生系を中心とした生物間相互作用を包括的に明らかにするという研究全体として目的に対しては、おおむね順調な進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して南西諸島での野外調査を行い、2021年度に大きな進展のあった天敵相、タマバエ類、ノミバエ類、ケシキスイ類のサンプリングおよび生態行動の観察を行い、絶対送粉共生系への影響を明らかにしていく。一方で、これまで十分なサンプリングを行えた寄生蜂、アリ類、クロツヤバエ類に関しては、多様性解析や分類学的研究、系統解析の結果をまとめ、全体像の把握につとめる。 さらに、イチジク属植物とイチジクコバチ類に関しては、引き続きサンプリングと遺伝子解析を行い、両者の系統関係や遺伝構造を比較することで共進化の歴史を考察する。
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