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2020 Fiscal Year Annual Research Report

近世における寺社縁起(由緒)・僧伝の形成ー寺社の蔵書の蓄積と開示を背景にー

Research Project

Project/Area Number 20J01491
Research InstitutionIbaraki University

Principal Investigator

向村 九音  茨城大学, 人文社会科学部, 特別研究員(PD)

Project Period (FY) 2020-04-24 – 2023-03-31
Keywords今出河一友 / 寺社縁起 / 由緒 / 大和国 / 南都
Outline of Annual Research Achievements

2020年度は、主に、大和国の神社の由緒に関するこれまでの研究を著書にまとめ、これまでの研究の総括と今後の課題の洗い出しを行った。詳細は以下のとおりである。

【1.『創られた由緒―近世大和国諸社と在地神道家』の刊行準備】 単著である『創られた由緒―近世大和国諸社と在地神道家』(勉誠出版、2021年6月刊行予定)(科学研究費補助金 研究成果公開促進費「課題番号20HP5033」の助成による)の入稿と校正を完了した。本書は、大和国の神社の由緒に関する研究書である。具体的には、今出河一友なる神道家が一七〇〇年前後に石上神宮・大和神社・大神神社などの神社の由緒を書きあらわし、「古伝」を創出していたことを明らかにした。
【2.大和国の神社の由緒を著した今出河一友に関する調査】 西尾市岩瀬文庫に、新出の今出河一友の著作に当たる『南都新薬師寺興来遺編』が伝来することが判明したため、原本調査をおこなった。
なお、当初、2020年度に実施することを予定していた手向山八幡宮の蔵書調査は、新型コロナ拡大の影響により、休止状態である。今後、情勢を鑑み、適切な時期に調査を開始する予定である。
【3.各地の寺院資料に関わる論文・翻刻資料の作成】 中山一麿監修・山﨑淳編『寺院文献資料学の新展開 第9巻 近世仏教資料の諸相Ⅱ』(臨川書店、2020年7月)に、道隆寺僧・宝厳(一一六五~一七三二)に関わる論文と、宝厳の伝記である『故宝厳大和上行状記』の翻刻資料を掲載した。宝厳は近世中期に讃岐を中心に活躍した新安流(真言宗の一派)の僧である。宝厳の経歴や法流の授受、書写活動を整理することで、近世中期に讃岐で新安流が展開していった一様相を明らかにした。また、『故宝厳大和上行状記』は宝厳の生前にいったん成立し、死後に増補されたという成立事情を持っており、近世における僧伝形成の特殊な事例であることを指摘した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2020年度は「(1)穴師神社の由緒生成と『忌部禊詞』の「発見」に関する論文の執筆」、「(2)大和国諸社の由緒についてまとめた単著の出版」、「(3)手向山八幡宮の蔵書調査」、「(4)『日内山観音縁起』を扱った論文の執筆」を実施する計画であった。
(1)(2)に関しては完了した(単著の出版は2021年6月を予定)。
(3)に関しては、新型コロナ拡大の影響により休止状態であるが、今後、情勢を鑑み、適切な時期に調査を開始する予定である。
(4)に関しては、そもそも論文執筆の目的が讃岐国における新安流の展開について検討することにあったため、『日内山観音縁起』に先んじて『故宝厳大和尚行状記』の位置づけを丁寧に行っておく必要があり、後者の検討を優先した。よって、『故宝厳大和尚行状記』に関する論文を中山一麿監修・山﨑淳編『寺院文献資料学の新展開 第9巻 近世仏教資料の諸相Ⅱ』(臨川書店、2020年7月)に発表した。
以上のように、一部、新型コロナの影響によって滞っている計画もあるが、全体としてはおおむね順調に遂行できている。

Strategy for Future Research Activity

2021年6月刊行予定の単著では、今出河一友の著作を中心に大和国諸社の由緒生成について論述したが、今後、一友の周辺人物(南都諸社の神職や垂加神道家ら)に対象を広げ、近世の南都における由緒述作の営みについて考察してゆく。加えて、由緒述作の背景にあった寺社の蔵書開示の動きについても検討し、奈良町における〈知〉の形成について考察する。具体的には以下の通りである。

【1】大阪府立中之島図書館石崎文庫と奈良県立図書情報館の蔵書のうち、一友周辺人物に関連する典籍を調査し、調査結果を学会発表ないし論文にまとめる。これを通して、近世に南都の神職や神道家がどのような典籍を享受し、述作していたのか、その一端を明らかにする。
【2】讃岐における新安流の初期の展開に関する論文をまとめる。これまで、新安流の祖とされる浄厳が讃岐に来った直後の、讃岐における新安流の展開に関する研究結果を報告してきたが、2021年度以降は浄厳が讃岐を訪れた頃の法流の展開について考察してゆく。

  • Research Products

    (3 results)

All 2020

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)

  • [Journal Article] 道隆寺僧宝厳関連聖教にみる新安流の讃岐伝播の一端2020

    • Author(s)
      向村九音
    • Journal Title

      仏教文学

      Volume: 45 Pages: 37-46

  • [Journal Article] 宝厳の修学と法流授受の様相―『故宝厳大和上行状記』を軸として2020

    • Author(s)
      向村九音
    • Journal Title

      寺院文献資料学の新展開 第9巻 近世仏教資料の諸相Ⅱ

      Volume: 9 Pages: 235-280

  • [Journal Article] 今出河一友による石上神宮由緒記の生成―「家の由緒」との連関―2020

    • Author(s)
      向村九音
    • Journal Title

      説話文学研究

      Volume: 55 Pages: 166-176

    • Peer Reviewed

URL: 

Published: 2021-12-27  

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