2020 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの繁殖パラメーターに関する実験資源生態学的研究
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20J01497
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 綾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / プレレプトセファルス / 複数産卵地点 / 繁殖特性 / 産卵生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、資源減少が懸念されているニホンウナギの繁殖特性に関する知見を蓄積して、将来的に本種の資源量予測を行う際の科学的根拠を得ることを目的としている。初年度の2020年4月から8月末までは、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、所属機関や外部研究施設への入構が困難であった。この期間は在宅勤務をして、過去に得られた成果の取り纏め、学術論文や書籍からの情報収集に努めた。 9月から所属機関に通勤し始め、ニホンウナギの複数産卵地点形成の可能性を示唆する成果を得た。2014年5月14日から6月4日に研究船「なつしま」航海NT14-09が実施され、5月26日と27日にニホンウナギの天然卵3個を発見した。この採集から3日または4日後、卵の採集地点から南西方向に約170km離れた地点で、孵化直後の仔魚であるプレレプトセファルス224個体を採集できた。また、ニホンウナギの卵は放卵されたのち、約10cm/sの北赤道海流により、産卵場から西方向へ直ちに輸送される。この海流により3または4日間かけて卵が輸送されたと仮定すると、卵はプレレプトセファルスに孵化し、約25.9から34.6km離れた地点まで輸送されると推定された。しかし、実際にプレレプトセファルスが採集された地点は、卵の採集地点から約170kmと遠く離れていた。よって、本航海にて採集された卵とプレレプトセファルスは、異なる地点で生じた産卵行動に由来する個体であり、2014年5月には少なくとも2地点の産卵地点が存在したものと考えられる。本成果は、今後、ニホンウナギの産卵場調査計画を立案する際に重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、所属機関や外部研究施設への入構が制限されたため、実験の進捗は遅れ気味であるが、予定していた研究内容の一部を完了または開始した。また、勉強会や研究発表会等に参加して、過去得られた成果を報告し、外部研究施設や他分野の研究者と活発に議論した。加えて、ニホンウナギの複数産卵地点形成に関する成果を英文誌に公表し、研究活動全体は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度3月から他大学の研究者と共同研究を開始し、ニホンウナギ孵化仔魚のDNA多型を利用して、産卵に参加した親魚数の推定とその性比の解明に取り組んでいる。この実験は7割ほど終了しており、次年度はデータ解析と成果の取り纏め等を予定している。また、ニホンウナギの繁殖特性のさらなる解明のため、外部研究施設と共同研究を開始する予定である。ただし、新型コロナウィルス感染症の状況により研究開始が困難である場合は、別の研究案に着手する計画である。
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Research Products
(3 results)