2021 Fiscal Year Annual Research Report
ウナギの繁殖パラメーターに関する実験資源生態学的研究
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20J01497
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 綾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンウナギ / ウナギ属魚類 / クロアナゴ属魚類 / DNA多型 / 耳石 / 繁殖特性 / 成長 / 産卵生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、資源減少が懸念されているニホンウナギの繁殖特性に関する知見を蓄積するため、以下2つを実施した。 (1)ニホンウナギ孵化仔魚182個体のDNA多型を利用して、新月期に産卵した雌雄親魚数を推定した。182個体のミトコンドリアDNAの調節領域631bpを決定して、153種類のハプロタイプを検知した。同じハプロタイプを共有する仔魚ペアは同じ母親を持つと仮定した。次に、12マイクロサテライトマーカーを用いて182個体の遺伝子型を決定した。しかし、4マーカーではハーディー・ワインベルグ平衡からの有意な逸脱、2マーカーでは過剰なホモアレルが観察され、これら6マーカーを解析から除外して親魚数推定を行った。ミトコンドリアDNAとマイクロサテライト解析から得られた情報を基に、COLONYとKINGROUPソフトウェアを用いて、血縁関係にある仔魚を特定し、親魚数を推定した。その結果、雌親161個体と雄親161個体の計322個体が仔魚182個体の生産に関与しており、その性比は1:1であると推定された。また、同母・異父や異母・同父を持つ仔魚ペアが20組以上見つかり、雌雄ともに複数相手と交配しており、複数個体の親ウナギが集団で産卵すると考えられた。 (2)ウナギ属魚類とクロアナゴ属魚類の成長率を比較するため、耳石日周輪解析に着手した。分子生物学的手法を用いて、南太平洋で採集したクロアナゴ属魚類74個体の種を同定した結果、少なくともクロアナゴ属3種がオーストラリアやニューカレドニア、タヒチなどの周辺海域に出現することが認められた。このうち、種が同定できたConger cinereusとC. wilsoniのクロアナゴ属2種の成長率を算出し、既知のウナギ属のものと暫定的に比較した結果、クロアナゴ属がより高い成長率を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けて、当初予定した実験の開始が遅れているが、計画していた研究内容の一部を完了または開始した。これまでに得られた成果1件を英文誌に公表し、(1)親魚数推定に関する成果を英文誌に投稿した。(2)ウナギ属魚類とクロアナゴ属魚類の耳石日周輪解析については、必要な試料をすでに入手しており、実験やデータ解析をひきつづき実行できる状態にある。以上、初年度は遅れ気味であった実験を進め、得られた成果を随時公表していることから、研究活動全体は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ウナギ属魚類とクロアナゴ属魚類の耳石日周輪解析を継続して実施し、両属の成長率を正確に比較できる方法を模索する。また、ニホンウナギの繁殖特性のさらなる解明のため、外部研究施設と共同研究を開始する予定である。ただし、新型コロナウィルス感染症の状況によって、研究開始が困難である場合は、別の研究案に着手する。さらに、これまでに得られた成果を取り纏めて順次公表する。
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