2020 Fiscal Year Annual Research Report
統合的研究によるアフリカにおけるヒョウと人間の関係の解明
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20J01580
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
仲澤 伸子 静岡県立大学, 国際関係学部国際関係学科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカヒョウ / マハレ山塊国立公園 / カメラトラップ / 痕跡記録 / 文化的利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も調査地であるアフリカ・タンザニアのマハレ山塊国立公園(以下、マハレ)への渡航はできなかった。そのため、まずは日本に保管されている、マハレ滞在中に書き溜められた日本人研究者の日記から、野生動物と人の関係に関する記述を抽出した。マハレでは日本人研究者が50年以上にわたって、チンパンジーを中心とした野生動物研究をおこなっており、日記の記載からは人と動物の関係の変遷を確認できる可能性がある。 また、マハレで今まで設置してきた赤外線センサーカメラの画像を解析した。マハレでは5年間にわたり、仲澤が赤外線センサーカメラを森の中に設置しており、撮影された写真や動画から、マハレの動物相や、ヒョウの個体数、活動パターンを明らかにすることができる。そこで、2021年度はヒョウの活動パターンを中心に赤外線センサーカメラの結果をまとめ、論文を執筆し、国際学術雑誌に投稿した。 さらに、マハレの近隣に住んでいる現地調査助手とSNS等を通じて連絡を取り、タンザニアに生息するヒョウに関するデータをとる方法を模索した。現地調査助手は森の動物についての知識が十分にあり、動物やその痕跡を見つけることに長けている。そこで、日々森や村を歩いているなかで見つけた、ヒョウをはじめとする野生動物やその痕跡の種類と位置をノートに記録するよう依頼した。この記録から、今後、それぞれの動物がよく利用する場所などを明らかにすることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も、新型コロナウイルスの感染拡大により、調査地であるアフリカ・タンザニアのマハレ山塊国立公園(以下、マハレ)への渡航はかなわなかった。2020年度も同様の理由により渡航ができなかったため、2年間にわたり渡航ができなかったことになる。 本研究はアフリカヒョウと現地住民の関係性に焦点を当てている。野生動物の生態調査のためには、糞の内容物の解析や赤外線センサーカメラに撮影された動物の解析が必要であり、そのためには赤外線センサーカメラの設置や、糞の収集といった現地でのフィールドワークが不可欠である。また、現地住民に対するアンケート調査等をおこなうためには、調査に協力していただくための関係性づくりや、アンケート項目の説明が不可欠であるが、これらは対面で会話をする必要がある。 以上の理由から、本研究を進めるためにはタンザニアに渡航することが必要不可欠であるが、度重なる新型コロナウイルスの感染拡大により、渡航できる機会はなかった。そのため、本研究は当初の研究計画と比べると、遅れていると言わざるを得ない。 しかし、その一方で、SNSでの連絡に慣れており、日本人研究者のサポートを長年おこなってきた現地調査助手の協力によって、現地調査は小規模ながら継続している。さらに、日本にすでに蓄積されているデータを用いることで、新しい方向から当初の研究計画を進めようと試みている。そのため、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
ワクチンの接種証明書や、PCR検査の陰性証明を示すことによって、海外渡航が可能となりつつある。外務省が公開している海外安全ホームページでは、タンザニアのマハレ周辺の危険度はレベル1であり、渡航は可能であると考えられる。 そこで、2022年度はマハレでのフィールドワークの遂行を第一の目標としたい。まず、タンザニアの研究機関(TAWIRI)と連絡を取り、調査許可や滞在ビザを取得する。さらに、現地で日本人が経営する観光会社(JATAツアーズ)と連絡を取り、タンザニア国内の状況について情報収集をおこなったり、現地での安全な移動経路について模索する。 夏頃までには一度タンザニアに渡航する。現地では十分に感染症対策や、安全対策をおこなう。具体的には、手指の消毒、マスクの着用をおこなう。さらに、タンザニア国内の移動はすべて運転手を雇用し、消毒したレンタカーでおこない、不特定多数の人間と接触することの無いようにする。 調査地ではまず、赤外線センサーカメラをマハレの北部の境界付近に設置する。これにより、マハレ北部の動物相と、ヒョウの個体数を明らかにする。さらに、村人に聞き込みをおこない、村周辺でのヒョウをはじめとする野生動物の目撃情報を収集する。 調査後には、現地研究機関を訪問し、本研究計画に含まれている無人航空機(ドローン)の使用等に関して相談し、ドローン飛行に関する許可の取得を目指す。 帰国後は調査結果をまとめて論文を執筆する。さらに、可能であれば年度内にもう一度タンザニアに渡航し、ドローンを用いてマハレ北部の植生地図等を作成する。
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