2020 Fiscal Year Annual Research Report
新たな自然科学的年代決定手法の導入による東南アジア考古学の新展開
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20J01694
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
北原 優 岡山理科大学, 経営学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 考古地磁気学 / 考古地磁気強度実験 / 綱川-ショー法 / 岩石磁気分析 / 備前焼復元窯 / 庄田工田窯跡 / 強度永年変化曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度には主として以下のような研究調査を実施した。 (1)考古地磁気強度実験によって得られる強度データのばらつきの傾向と原因を探り、その抑制のための対処方法の検討を目的とし、熱残留磁化獲得時の地球磁場強度が既知である現代の被熱試料に対する考古地磁気強度実験と各種岩石磁気分析を実施した。実験試料には、陶芸家の平川忠氏が岡山県備前市に構築した備前焼復元窯から採取した窯床・窯壁・備前焼製品を使用した。考古地磁気強度実験は綱川-ショー法を用いて行い、岩石磁気分析に関しては熱磁気分析・磁気ヒステリシス分析・IRM獲得実験の3種を行った。綱川-ショー法実験の結果、窯床・備前焼製品試料から得られた平均強度値が復元窯内で磁力計を用いて観測された磁場強度と標準偏差の範囲で一致することが確認された一方、窯壁試料に関しては、壁表面から特定の深さに位置する試料より得られた強度値が、観測磁場値よりも大幅に異なる値を示すことが明らかとなった。また、この窯壁試料由来の強度値の傾向と岩石磁気データの傾向には一定の相関性が認められた。 (2)地磁気三成分のうち地磁気強度のみを用いた考古遺跡の年代決定の有効性、並びに岩石磁気データの考古学的議論への応用可能性について検討することを目的とし、現在、岡山県瀬戸内市にて継続的に発掘調査が行われている庄田工田窯跡から採取した須恵器片を実験試料として、綱川-ショー法実験および各種岩石磁気分析を実施した。綱川-ショー法実験の結果、同須恵器片から得られた平均強度値が、研究代表者らが近年構築した強度永年変化曲線と調和的であることが確認され、考古地磁気強度のみを用いた年代決定の有効性が示唆された。また帯磁率測定の結果からは、同一の窯内における産地もしくは水簸段階の異なる粘土の使用が示唆され、岩石磁気データからも考古学的議論に有用な情報を一定程度抽出できることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では年度内にベトナムを訪問し、ベトナム国立南部社会科学院考古学研究センターおよびクァンナム省ズイスエン県立サーフィン文化・チャンパ博物館において資料調査を実施する予定であったが、コロナウィルス感染拡大の影響で渡航が不可能となり、実験用の考古試料(サーフィン文化期の土器片等)を入手することが出来なかった。そのために同年度は予定を急遽変更し、国内で採取した実験試料を用いて、今後、ベトナムでの考古地磁気強度データセットの構築とその年代決定への応用研究を円滑に進めるための基礎的調査を行った。上記現地調査の延期により、本研究課題の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
同年度に予定していたベトナムでの現地調査に関わる経費を次年度に繰越し、改めて現地での資料調査・サンプリングの実施時期を検討し直すこととした。今後もコロナウィルスの影響により、現地への渡航が不可能である場合は、日本国内において利用可能な実験試料を使用し、基礎的研究をより緻密に実施していく予定である。具体的には、備前焼復元窯(岡山県備前市)試料を用いた検証実験を継続的に実施するとともに、国内で保管されているベトナム(ホアジェム遺跡・ゴーカム遺跡等)の土器試料・瓦試料を用いて考古地磁気強度実験および岩石磁気分析を行い、ベトナムでの研究に応用可能な基礎的知見の収集を目指す。
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Research Products
(5 results)