2021 Fiscal Year Annual Research Report
新たな自然科学的年代決定手法の導入による東南アジア考古学の新展開
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20J01694
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
北原 優 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 考古地磁気学 / ベトナム / ゴーカム遺跡 / ホアジェム遺跡 / 考古地磁気強度 / 綱川-ショー法 / IZZI-テリエ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は主として、ベトナムにおいて出土した各種考古遺物(消費地遺物)を考古地磁気学的研究、とりわけ考古地磁気強度研究に応用する際の基礎的知見を得ることを目的とし、ベトナム中部クアンナム省のゴーカム遺跡(紀元後2世紀周辺)の瓦試料、並びに中部カインホア省のホアジェム遺跡(紀元後2世紀周辺)の土器試料に対する考古地磁気強度実験および事前分析としての岩石磁気分析と段階熱消磁測定を実施した。 まず、事前分析としてIRM獲得実験を行った結果、瓦・土器試料群の磁性鉱物粒子集団は、(1)低保磁力1成分が卓越するもの、(2)低-中保磁力2成分が卓越するもの、(3)卓越する低保磁力1成分と比較的顕著な高保磁力1成分を含むものの3種に大別された。この差は試料の胎土と焼成履歴の差異に起因するものであると考えられるとともに、タイプ(3)の試料はより酸化的な雰囲気中で焼成されたことが推察される。段階熱消磁測定の結果からは、試料が(1)一成分の初生残留磁化を有するもの、(2)400℃前後で消磁される二次磁化を有するもの、(3)400℃以上で消磁される二次磁化を複数有するものの3種に大別されることが明らかとなった。このうちタイプ(2)および(3)に関しては、製品製作時の焼成(600℃以上)を経験した後に二次的に(400~500℃程度の温度で)被熱した、もしくは製品製作時の冷却過程で製品が転倒したことが示唆される。 続いて綱川-ショー法およびIZZI-テリエ法を使用し、考古地磁気強度実験を実施した結果、複数の試料から合格基準を通過する有意な強度値を得ることができた。この結果は、今後、ベトナム産考古遺物を使用した強度研究が体系的に実施可能であることを意味する。また、二手法の平均強度値が標準偏差の範囲で一致することも確認された。このことは、得られた強度値の妥当性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画においては、当該年度、ベトナムにおける二週間程度の現地調査および試料採取を2回程度計画していたが、COVID-19の流行による現地への渡航制限のために一切実施することができなかった。そのため、当該年度は計画を急遽変更し、日本(岡山理科大学)において保管されていたベトナム出土の各種考古試料を使用し、考古地磁気学的研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、COVID-19の流行によるベトナム現地への渡航制限が引き続き緩和されない場合は、本年度同様、岡山理科大学において保管されているベトナム産考古試料を使用した考古地磁気・考古岩石磁気学的研究を継続的に実施するとともに、前年度同様の現代の土製品(岡山県備前市の復元土窯の焼土・製品および島根県江津市の近代石見焼窯の焼成レンガ部材など)を使用した検証実験を継続的に実施する。なおベトナムへの渡航制限が緩和された場合は、当初計画の通りベトナムへ渡航し、現地調査および試料採取を実施後、それらの試料を用いた研究を進める予定である。
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Research Products
(1 results)