2021 Fiscal Year Annual Research Report
脳機能イメージングに基づく効用の個人間比較の実現とその所得再分配への応用
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20J01726
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松森 嘉織好 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 脳 / 効用 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の解析で特定した前帯状皮質及び前頭前野腹内側部のシグナル変化率と実験参加者の経済状況との関係を調べた。1円あたりの前帯状皮質及び前頭前野腹内側部のシグナル変化率は世帯所得の低い参加者の方が大きいことが分かった。また、前年度に作成した実験プログラムを用いて、世帯所得が中央値以下の人からなるグループと世帯所得が中央値より大きい人からなるグループの1円あたりの効用の平均値に対する公平な観察者の直観を調べたデータを解析した。世帯所得が中央値以下の人の1円あたりの心理的効用は世帯所得が中央値より大きい人のそれよりも、2倍程度大きいと判断されることが分かった。MRIによる効用測定実験と公平な観察者実験によって得られたそれぞれの効用指標による個人間比較が一致しているかどうかベイズ統計を用いて検証し、両者が一致しているという結果を得た。これにより、脳機能イメージングによる効用の個人間比較手法は人間の感覚の延長という特徴を備えた科学的な測定法であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRIを用いた金銭獲得課題遂行中のシグナル変化率と実験参加者の経済状況との関係を調べた。Matlab、R、Stan、Pythonなどのソフトウェアを使って順調に解析を進め、脳データの解析を完了した。昨年度に続きコロナ禍のため大学での作業が自由にできず、実験データの取得・管理の観点から研究遂行には例年以上の困難があったが、既存データセットの再考などを上手くおこなうことで、この困難も乗り越えていた。これにより、脳機能イメージングによる効用の個人間比較手法は人間の感覚の延長という特徴を備えた科学的な測定法であることが示唆された。彼ならではの地道な努力によって、本研究を軌道に乗せ、研究を遂行した点は高く評価できる。また、経済学、工学など他分野との研究者とも積極的に交流し、学際的な考察も展開しており、期待通りの進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①“所得再分配”実験:社会経済的状況の異なる人々60人程度の効用を、前年度までに開発した技術によって測定し、その情報を基に実験参加者に謝金を分配する実験をおこなう。 ②これまでの結果を取りまとめて、論文を執筆する。 ③研究成果を国際学会で発表し、また、論文として国際学術雑誌に投稿・発表する。
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Research Products
(3 results)