2020 Fiscal Year Annual Research Report
発がんにおけるDNA N6メチルアデノシンの意義:がん治療の新規作用点となるか?
Project/Area Number |
20J01824
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小林 良祐 群馬大学, 生体調節研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | メチル化 / CRISPR / がん / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやマウス等の哺乳動物の細胞では、ゲノムDNA中のN6メチルアデノシン(6mA)の存在量は非常に少なく、その生物学的意義はほとんどわかっていない。しかし近年の解析技術の向上により、ヒトのがんとDNA 6mAとの関係が少しずつ明らかになってきた。DNA 6mAの脱メチル化酵素阻害によりがん細胞の増殖を抑制できるという報告は、すなわちDNA 6mA低メチル化状態がエピゲノム脱制御を介してがんの発生や進行の原因になっていることを示唆するのではないか?本研究ではこの仮説を検証するため、遺伝子改変マウスモデルを用いた解析により、6mA修飾と発がんとの関係を生体レベルで明らかにする。 採用初年度となる本年度は、DNA 6mA のメチル化転移酵素とされる Mettl4と、脱メチル化酵素とされるAlkbh1 について、CRISPR-Cas9 システムによりそれぞれノックアウトマウスを作製した。得られたマウスを繁殖させることで今後の実験に必要な個体数を維持する一方、交配試験等の表現型解析を行った。Alkbh1ノックアウトマウスはホモノックアウトがほとんど得られなかったため、早期致死と考えられる。Mettl4に関するホモノックアウトマウスでは、少なくとも通常条件飼育下では明確な表現型は認められていない。今後は長期間飼育での発がん頻度比較や、腫瘍易性マウス系統との交配による影響の評価を行う。 また生体組織から抽出した DNA から DNA 6mA を検出する手法の確立を目指した。LC-MS による DNA 6mA 検出手技の検討を重ね、標品ヌクレオシドでは0.001% 6mA/Aまでの6mAを検出することができた。しかしながら、少なくともマウス肝臓組織から抽出したゲノムDNAおよび精製ミトコンドリア DNAでは、我々の検出系で明瞭なシグナルを確認することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体組織ゲノムDNAからのDNA 6mA検出が現状では困難だったため。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的にDNA 6mAレベルを高めた条件化(メチル化酵素高発現、脱メチル化酵素の阻害)でのDNA 6mA検出を目指す一方、一分子レベルでの塩基修飾を検出可能な PacBioシーケンサーや Nanoporeシーケンサ ーの使用についても検討する。 一方、脱メチル化酵素Alkbh1についてはがんとの関連を示唆する報告が複数あるため、Alkbh1高発現および欠損マウスがんモデルおよびがん培養細胞モデルの作製を進め、がん発症や進行との関わりを多面的に調査する。
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Research Products
(6 results)