2020 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴの幼生におけるオプシンを介した光受容と光応答的な遊泳のメカニズムの解明
Project/Area Number |
20J01841
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
酒井 祐輔 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | オプシン / 造礁サンゴ / 感覚生態 / 行動 / 光受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
造礁サンゴの一種であるウスエダミドリイシの幼生は、光の減少に応じて遊泳を一時停止するという明確な光応答を示す。こうした光応答行動は、共生する藻類(褐虫藻)に栄養源を依存しているサンゴにとって、生息光環境を決定する上で重要であると考えられる。サンゴの行動や繁殖に与える光の重要性が明らかになってきた一方で、サンゴ、ひいてはサンゴやイソギンチャクが属する花虫綱の光受容メカニズムについてはほとんど明らかになっていない。本研究は、動物の主要な光受容体であるオプシン類に着目し、オプシンによる光受容と幼生の光応答行動の関係性について明らかにするとともに、花虫綱におけるオプシンを介した光受容特性について解明することを目的とした。本年度は、すでに公開されているウスエダミドリイシのゲノム情報から18種類のオプシンホモログを同定し、そのうち17種類を幼生のcDNAからクローニングした。さらにこれらの17種類のオプシンを哺乳類培養細胞で強制発現させ、その光依存的な細胞応答を測定した。その結果、13種類について光刺激による細胞内cAMPもしくはカルシウムイオン濃度の変化が確認され、ウスエダミドリイシのオプシンが実際に光受容能をもち、光依存的に細胞内のシグナル伝達系を駆動することを明らかにした。また、精製したオプシンタンパク質の分光学的解析や、異なる波長の光を照射した際のオプシン発現細胞の応答強度の定量から、13種類のウスエダミドリイシオプシンの吸収波長特性を推定あるいは解明することに成功した。特に幼生においてmRNA発現量が高いオプシン4種類について吸収波長特性を明らかにすることができ、またそのうち2種類については幼生の外胚葉細胞にmRNAが発現していることを確認した。これらの結果は、オプシンによる光受容と幼生の光応答行動との関連を研究する上で足がかりとなる重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、オプシンの同定と吸収スペクトルを始めとした分子特性を明らかにすることを目的として研究をスタートさせ、実際にウスエダミドリイシがもつオプシンについて網羅的に吸収波長特性を決定あるいは推定することに成功した。これらの吸収波長特性と幼生の個体レベルでの波長感受性を比較し、さらに発現局在等の情報と合わせることで、幼生の光応答行動に関わる候補オプシンを効果的に絞り込むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
幼生におけるmRNA発現が高く、また本年度の結果から吸収波長特性が明らかになっているオプシンについて、in situ hybridizationおよび免疫組織化学によって発現局在を明らかにする。また、ウスエダミドリイシの産卵期(5月下旬から6月上旬)にプラヌラ幼生を入手し、様々な光条件下での行動観察によって、幼生の光応答行動に有効な光波長を詳細に特定する。
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Research Products
(4 results)