2020 Fiscal Year Annual Research Report
ザーヤンデルード川とともに生きる人々の生態史から導き出される共的河川観の討究
Project/Area Number |
20J01879
|
Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
西川 優花 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | イラン地域研究 / 乾燥地農村 / 水利権 / 自然観 / 生態史 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イラン中央高原を貫流する内陸河川ザーヤンデルードを対象とし、河川流域に存在する生態的・社会的に多様な諸地域において、流域に暮らす人々が河川とどのように連関してきたのかを、生業・生活の視点から明らかにすることを目的としている。 研究課題初年度であった本年度は、これまで先行して研究調査をおこなってきたザーヤンデルード下流域の農村都市ヴァルザネでの継続調査、そして上流域および中流域の農村における予備調査を実施することを予定していたが、全世界での新型コロナウイルス感染症拡大のため、渡航が困難となり、現地調査については延期とした。一方、予備調査と並行して実施を計画していた資料調査については、当初の調査範囲を拡大して実施した。具体的には、農村統計年鑑資料(1966,76,86,96年)を流域農村の各点について収集し、人口流動や識字率などの変容から河川流域に存在する社会の動態を通時的に明らかにし、その概観を把握できるようデータの整理を進めた。また、水利用と管理について、より通時的視点から変容を明らかにするために、カージャール朝期およびパフラヴィー朝期の水利文書について収集を行い、概訳と整理を進めた。 これまで得られた研究成果の一部については、日本生活学会における研究報告や、イラン・ヤズド大学とアジア経済研究所とが共催したウェブ形式によるイラン環境問題に関するセミナーにおける研究報告を行い、意見交換を行った。また、これまで収集したデータをもとに、英文の学術論文をまとめ、書籍の一章として出版された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、研究計画に基づいたフィールド調査を実施することができず、進捗はやや遅れている。ただし、フィールド調査を実施しなかった代替策として、資料調査の実施範囲を拡大し、河川流域に存在する諸地域の変容を通史として把握することができるようデータの収集と整理を行い、フィールド調査実施に向けた準備に注力した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題2年目には、初年度において収集した現地統計年鑑や先行研究をもとに作成した河川流域全体対象とした地域の変遷についてまとめながら、感染症の流行状況を判断しながら現地調査を行うことを計画している。具体的には、年度前半において、上述のデータおよび水利文書の変遷についてまとめ、学会および研究会において報告を行い、そこで得たコメントを踏まえつつ論文としてまとめる。また、当作業において作成する統計年鑑をもとにした資料を、博士論文の原稿に組み込み、博士論文の書籍化作業についても並行して進める。年度後半には、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見定めつつ、フィールド調査を行うことを計画している。
|