2020 Fiscal Year Annual Research Report
悪性脳腫瘍のスーパーエンハンサー転写と遺伝子標的エピゲノム編集による治療探索
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20J01889
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
平野 雅規 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | glioblastoma / super-enhancer / organoid |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、まず、手術中に回収された患者脳腫瘍検体から3次元組織培養(オルガノイド作成)を進め、1年間で神経膠腫・髄膜腫それぞれ10例程度のオルガノイドを作成することができた。又、それらを凍結保存した後に再度培養が可能であることも確認した。 神経膠腫については少しずつオルガノイド作成の報告が出つつあるが、髄膜腫オルガノイドについては未だ報告がない。そこで、次世代シーケンサーを用いた網羅的解析〔whole exome sequencing(WES), RNA sequencing(RNA-seq), DNAメチル化解析〕により、まず親腫瘍とオルガノイドの相同性を示した。さらに、細胞と同様にオルガノイドに対しても効率的な遺伝子操作が可能であることを示し、これまで困難であった髄膜腫の基礎実験に用いることができる優れたモデルとなる可能性を示した。 続いてスーパーエンハンサー解析に必須となるH3K27acクロマチン免疫沈降(ChIP)の条件検討を行った。細胞と同様、オルガノイドにおいては効率的なChIPを実施することは比較的容易であったが、凍結腫瘍組織では様々な条件検討を要した。 このほかに、スーパーエンハンサーを標的とした新規治療法を検討中である。様々なヒト神経膠腫細胞株の解析により抽出された共通スーパーエンハンサー領域をターゲットとする新規システムを開発し、標的遺伝子の発現が有意に抑制されることが示された。次年度においては、引き続きChIP-qPCRや次世代シーケンサーを用いた網羅的解析を行い、新規手法の特異性・効率などを評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、まず腫瘍組織からオルガノイドが樹立できるか否かが関門の一つであったが、研究に意欲的に取り組み、当該年度中に神経膠腫・髄膜腫といった悪性脳腫瘍から無事オルガノイドを樹立することができた。又、研究計画とは多少前後するが、新規ターゲットエピゲノム編集に必要なプラスミド類の合成も滞りなく進み、その治療効果を示唆する結果が得られつつある。 本課題の鍵となるスーパーエンハンサー解析についても、腫瘍組織に対するクロマチン免疫沈降の条件検討を進めており、後は順次処理を行い既に確立したパイプラインでの解析を行う状態であり、概ね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もさらに腫瘍組織からのオルガノイドの樹立、およびスーパーエンハンサー解析を進めていく予定である。またターゲットエピゲノム編集で標的とするゲノム配列の条件検討、複数の細胞株での治療効果の検討も行っていく。
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