2020 Fiscal Year Annual Research Report
間充織凝集を模倣した光駆動型細胞足場による膵原基の構築と細胞力覚からの発生の理解
Project/Area Number |
20J01898
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
本間 健太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | アゾベンゼン / 相転移 / 光異性化 / ハイドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、四次元細胞足場を合成し、生体内の時空間プロセス(間充織凝集)を模倣することで膵原基を形成することを目的としている。今年度は37°Cで駆動する光応答性ゲルを合成・評価し、細胞培養を実施した。 紫外または可視光に応じて異性化するアゾベンゼンのモノマー(AzoAA)およびジメチルアクリルアミド(DMA)をラジカル共重合した。Poly(AzoAA-r-DMA)を溶解した水溶液の透過率は温度上昇に伴って低下したことから、下限臨界溶液温度(LCST)型の相分離挙動を示すことを確認した。cis型時のLCSTはtrans型時のLCSTよりも高かった。特に、アゾベンゼン導入率を制御することで、37°Cにおいて光誘起相分離が可能であった。 この知見をもとに、poly(AzoAA-r-DMA)ゲルを合成した。37°Cにおける光応答性を確認したところ、紫外/可視光照射に伴い可逆的に膨潤収縮した。さらに、UV照射強度を調整することで膨潤キネティクスを制御することが可能であった。UV光照射前後の粘弾性測定を行った結果、膨潤によって弾性率が最大69%低下した。 次に、ヒト乳腺癌細胞MCF-7をpoly(AzoAA-r-DMA)ゲルに播種し、弾性率変化に対する遺伝発現量を評価した。培養開始から12時間または36時間時点で足場を硬化させ、PCR測定により48時間後のE-カドヘリン発現量を定量化した。12時間で足場硬化させた条件と可視光照射しない条件でのE-カドヘリン発現量は同等であった一方で、36時間で足場硬化させた条件での発現量は先述の2条件と比較して有意に低かった。これらの結果から、足場硬化直後にE-カドヘリン発現量は低下するが、その発現量変化は一時的であることが示唆された。Poly(AzoAA-r-DMA)ゲルは四次元細胞足場としてのみでなく、力学特性が変化する二次元動的細胞足場としても有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的にある四次元細胞培養を実現するにあたって肝となる光応答性細胞足場の設計に本年度は重点を当てた。AzoAAとDMAをラジカル重合し、それらの比率をチューニングすることで37°Cにおいて光誘起相分離する高分子を合成し、またそれを架橋することで可逆的な膨潤収縮を達成した。膨潤収縮の振幅は架橋密度によって制御可能であり、そのキネティクスは光照射強度で調整できるため、発生プロセスをゲルの膨潤収縮により模倣するにあたって適切な条件を系統的に検討することができる。 加えて本年度はこの光応答性ゲルをシート状に作製し、力学特性が変化する動的2次元細胞足場としての可能性を示すことが出来た。ヒト乳腺癌細胞MCF-7を培養し、培養開始から異なる時点で足場を硬化させた結果、力学特性変化に対するMCF-7の応答は一時的であることを示唆する興味深い結果が得られている。2次元培養系における本結果は既に原著論文としてActa Biomaterialiaに掲載済みであり、今後細胞接着分子や骨格の蛍光標識を通してより詳細に力学特性の変化に対する応答を解析することが可能である。 光応答性ゲルを構成するpoly(AzoAA-r-DMA)の水溶液中での相分離挙動に関しても投稿論文を執筆中であり、国内学会にて研究成果を報告している。 以上より、本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果より光照射に応じて膨潤収縮するpoly(AzoAA-r-DMA)ゲルの設計指針は得られたため、次年度は複数種の細胞をpoly(AzoAA-r-DMA)ゲル中に内包し、ゲルを収縮させた際の細胞観察および評価を行う。ゲル収縮により発生段階で生じる細胞同士の凝集過程を模倣し、膵原基の形成を目指す。まず四分岐poly(AzoAA-r-DMA)を合成し、細胞接着性ペプチドを担持した光分解性架橋剤と末端反応することによってpoly(AzoAA-r-DMA)ゲルを作製する。ゲル形成の際に内胚葉細胞、間葉系幹細胞、内皮細胞を内包する。膵原基の形成はPdx1(pancreatic and duodenal homeobox 1)の発現量を定量PCRによって評価する。また、グルコース濃度上昇に対する膵原基のインスリン放出量をELISAにより測定する。これら機能評価に加え、内包した各細胞を蛍光標識し、共焦点顕微鏡により三次元追跡する。
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Research Products
(4 results)