2020 Fiscal Year Annual Research Report
Non-perturbative aspects of quantum field theories from integrability
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20J10126
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 敏博 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 超対称ゲージ理論 / 可解格子模型 / 共形場理論 / AGT対応 / 位相的場の理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は可解格子模型の転送行列,N=2超対称ゲージ理論の欠陥演算子であるWilson-‘t Hooft演算子,2次元共形場理論のVerlinde演算子という3つの量の間の等価性を理論的に示した.さらにこれらの等価性は弦理論のセットアップに埋め込むことにより統一的に理解できることもわかった. 具体的には,超対称ゲージ理論としてN=2周期的箙ゲージ理論と呼ばれるクラスのゲージ理論を考え,その理論に含まれるWilson-‘t Hooft演算子を考える.この演算子の期待値は超対称局所化の方法を用いて厳密に計算することができ,Coulombモジュライ空間上の関数として得られる.ここで,Wilson-‘t Hooft演算子の期待値が非可換な積であるMoyal積を満たしていることを考慮してさらにWeyl量子化(変形量子化)を行うことによって,ある状態空間に作用する演算子として表し直すことができる.この演算子が三角関数型の可解格子模型の転送行列となっていること,および作用している状態空間がその格子模型のスピン鎖の状態空間となっていることを示した.加えて,AGT対応を用いることにより転送行列を戸田共形場理論のVerlinde演算子と同定することもでき,このときスピン鎖の状態空間は戸田共形場理論の共形ブロックのなす空間とみなすこともできるということも示した.最後に,考えていたN=2周期的箙ゲージ理論を弦理論のセットアップに埋め込み,弦理論の双対性を用いることで4次元Chern-Simons理論と関係づけられることもわかった.4次元Chern-Simons理論は2次元可積分系の統一理論として期待されており,Wilson-‘t Hooft演算子が転送行列とみなせることの自然な説明を与えるとともに,さらなる応用をも示唆する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標はブレーンタイリング理論からから得られる場の量子論と可積分系を結びつけ、それをゲージ重力対応に応用することである。そのためにはS^1xS^3上の4次元最大超対称ヤンミルズ理論から可積分系を出現させることが重要である。 本筋であるS^1xS^3上での解析に加えて、S^1xR^3上での非局所演算子を考慮しておくことは有用である。S^3とR^3ではコンパクトであるかどうかが本質的かつ重要な違いではあるものの、計算の多くの部分で共通の手法を用いることができる。幸いS^1xR^3上で局所化の方法を用いて非局所演算子の期待値を解析した先行研究は既に存在し、かつそれらが量子可積分系を与えるということは我々が示した。これらを踏まえて、S^1xS^3上での解析に乗り出す準備が整ったと言える。 研究の進捗はおよそ当初の計画通りに進んでおり概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標であるS^1xS^3上での解析がうまくいけば、4次元最大超対称ヤンミルズ理論におけるWilsonループの超共形指数が量子可積分系で知られているR行列として得られるはずである。4次元空間がS^1xS^3の場合、AGT対応により2次元q変形ヤンミルズ理論側でも独立にWilsonループの演算子積を調べておくことができるかもしれない。2次元q変形ヤンミルズ理論は位相的場の理論であるので、4次元Chern-Simons理論で用いられた解析も本質的に重要な参考になると思われる。以上を踏まえて、4次元最大超対称ヤンミルズ理論に対応する重力理論で基本弦の超対称指数を計算する解析に乗り出す。ゲージ重力対応により古典重力理論で解析する際にはラージN極限を考える必要が出てくるため、一般にゲージ重力対応において超共形指数のラージN極限での振る舞いを議論した先行研究を参考にし慎重に解析を進める。最終的には、ここで得られる新たな可積分構造が重力理論側の基本弦の可積分性としてどのように幾何学的に理解できるか、およびゲージ重力対応の拡張に寄与することができるかどうかを探ることを視野に入れる。 また、S^1xS^3xT^2上にD5ブレーンおよびD3ブレーンを配置する方法はブレーンタイリング理論により可積分系を出現させる最も素朴な方法の一つであるため、他の空間に置き換えることで異なる可積分系を考えられないかということも念頭に置いておく。
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Research Products
(5 results)