2020 Fiscal Year Annual Research Report
SiCパワーモジュールの電気および熱特性の連成解析手法の開発および高電力密度設計
Project/Area Number |
20J10227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福永 崇平 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | SiCパワーデバイス / パワーモジュール / 多目的最適化 / グラファイト / アクティブゲートドライブ / ディジタルアクティブゲートドライバ |
Outline of Annual Research Achievements |
パワーエレクトロニクス機器の高電力密度化に向け, Siの代替として注目されているSiCパワーデバイスの特長を活かすためには, モジュール化による寄生インダクタンスの低減(電気特性)と放熱性能の向上(熱特性)のトレードオフ関係の改善が必要不可欠である。本研究はSiC パワーモジュールの社会実装を加速するために必要な高電力密度設計を実現するため, SiCパワーモジュールの電気および熱特性の連成解析手法を開発する。物理構造に基づき各特性をモデル化するとともに多目的最適化手法を適用することで, トレードオフ関係にある両特性を同時に考慮した最適設計を可能にする。 当該年度はSiCパワーモジュールのモジュール基板の回路配線構造, およびモジュール基板やパッケージングに用いる材料の物性値をもとに, パワーモジュールの電気特性と熱特性をそれぞれモデル化した。構築した各モデルを連立して, 数理計画法に基づく多目的最適化を行う, パワーモジュール設計アルゴリズムを開発した。またSiCパワーモジュールの電気特性と熱特性のトレードオフを改善するため, 高熱伝導率かつ熱異方性を有するグラファイトをモジュール基板材料として用いた。従来の銅モジュールと比べた高放熱性能を達成するとともに, 熱異方性がパワーモジュール内部の熱干渉低減に有効であることを定量的に示した。 さらに最適設計したSiCパワーモジュールの性能を最大化して駆動するため, ゲート電圧を任意指定可能なディジタルアクティブゲートドライブ回路の適用を検討した。高周波駆動可能なFPGAに高速駆動可能な1ビットゲートドライバ回路を適用し, 4ビットディジタルアクティブゲートドライブ回路の駆動を検証した。従来のアナログアクティブゲートドライバでは実現できないデバイス間の調整に加え, 制御パラメータを変更することで, スイッチング動作の最適化を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はSiCパワーモジュールのモジュール基板の回路配線構造, およびモジュール基板やパッケージングに用いる材料の物性値をもとに, パワーモジュールの電気特性と熱特性をそれぞれモデル化した。構築した各モデルを連立して, 数理計画法に基づく多目的最適化を行う, パワーモジュール設計アルゴリズムを開発した。デバイス実装位置をパラメータとして開発したアルゴリズムを適用することで, 電気特性と熱特性を最大化するパラメータが得られた。またSiCパワーモジュールの電気特性と熱特性のトレードオフを改善するために, 高熱伝導率かつ熱異方性を有するグラファイトをモジュール基板材料として用いることに注目した。グラファイトを適用することで, 従来の銅モジュールと比べた高放熱性能を達成するとともに, 熱異方性がマルチチップパワーモジュールの熱干渉低減に有効であることを定量的に示した。 さらに最適設計したSiCパワーモジュールの性能を最大化して駆動するため, ゲート電圧を任意指定可能なディジタルアクティブゲートドライブ回路の適用を検討した。高周波駆動可能なFPGAに高速駆動可能な1ビットゲートドライバ回路を適用し, 4ビットディジタルアクティブゲートドライブ回路の駆動を検証した。従来のアナログアクティブゲートドライバでは実現できないデバイス間の調整に加え, 制御パラメータを変更することで, スイッチング動作の最適化を検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度に開発した最適設計アルゴリズムを用いて, マルチチップパワーモジュールのモジュール基板構造の最適設計を行う。当該年度に検討したパワーデバイス実装位置に加え, モジュール基板パターンの寸法および厚み, さらに用いる材料をパラメータとする。考慮するパラメータの数と多目的最適化により得られたパレート解の多峰性について評価する。設計したパラメータを用いて実装したSiCパワーモジュールの動作特性を評価することで, 設計の妥当性を確認する。さらに設計したモジュール基板に対して温度サイクル試験を行い, 長期間動作に対する信頼性について確認する。 また最適設計したSiCパワーモジュールの性能を活かした動作を行うため, ディジタルアクティブゲートドライバによる直並列接続した大容量電力変換回路の電圧および電流のアンバランス改善を検討する。ディジタルアクティブゲートドライバの垂直および時間軸の分解能がアンバランス改善に用いる制御の自由度に与える影響を定量的に評価する。またパワーデバイスの動特性を最適化する入力信号の最適化アルゴリズムおよび回路構成ついて検討する。 得られた研究成果の内容を有識者との議論を通してより一層高めるため, 国内研究会・国際学会発表を積極的に行う。また得られた結果をとりまとめ, 学術論文の執筆を計画している。
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Research Products
(6 results)