2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J10248
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
加藤 智起 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 幹細胞 / DNAダメージ / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮組織の恒常性は、質の良い幹細胞のクローン拡大によって質の悪い幹細胞が組織から排除される「幹細胞競合」によって保たれること、およびクローン拡大能は加齢に伴い低下することを、申請者らは明らかにした(Liu, Matsumura, Kato et al., Nature. 2019)。しかし、なぜクローン拡大能が低下するのかに関しては明らかになっておらず、抗老化手法の開発に向けた次なる課題となっていた。 申請者らは幹細胞競合の詳細なメカニズムを明らかにするため、一部の表皮幹細胞に人為的にDNAダメージを誘導し、かつ、その細胞を可視化できるマウスモデルを作製し、DNAダメージの生じた細胞が1か月以内に表皮組織から排除されることを明らかにした。本マウスにおいてDNAダメージが誘導された細胞の運命追跡、および当該細胞を単離しての遺伝子発現解析によって、DNAダメージが生じた表皮幹細胞は分化を介して表皮から排除されること、および分化マーカー遺伝子の発現は、幹細胞ニッチ(基底層)に存在している段階で既に上昇していることを明らかにした。一方で、加齢に伴う幹細胞競合の鍵分子であるCOL17A1に関しては、遺伝子レベルおよびタンパクレベルで発現の変化は認められなかった。 さらに、上記のマウスのDNAダメージを誘導していない幹細胞は、対照マウスの表皮幹細胞と比較して一部の遺伝子の発現が変化していることも明らかになり、DNAダメージを誘導された幹細胞が何らかのシグナルを介して周囲の幹細胞の性質を変化させている可能性が示唆された。 上記の内容について、現在学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の仮説とは異なる事実も明らかになってきたが、幹細胞競合の分子メカニズムを明らかにするための新たなマウスモデルの作製に成功したため、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞競合の詳細な分子メカニズムを明らかにするために、本来排除されるDNAダメージを誘導された細胞が排除されなくなる条件を探索する。具体的には、過去の報告を参考に、候補となるシグナルの阻害剤等を投与することで、排除に関わっているシグナルを同定を目指す。 また、より効率的な探索を可能にするために、in vitroで一部の細胞のみにDNAダメージを誘導できる系の構築も行う。その後、化合物ライブラリーやsiRNAライブラリー等を利用して網羅的に探索を行うことで、想定外の因子が排除に関与していた場合でも対応できるようにする。
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