2020 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト起立動作における感覚情報に基づく制御モデルとリハビリによる長期変容の解明
Project/Area Number |
20J10255
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 和憲 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 起立動作 / 筋シナジー / 感覚 / 機械学習 / ニューラルネットワーク / 前庭感覚 / 体性感覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
起立動作の筋活動の制御メカニズムを明らかにするため,本研究では,感覚情報に基づいて起立動作の筋活動の制御が行われていると考え,感覚情報に基づく起立動作の筋活動制御メカニズムを明らかにすることを目指している.本年度は,多様な感覚情報の中で,どの感覚情報を主に用いて起立動作の筋活動制御を行っているのかを明らかにすることを目的とし,研究を行った.そのために,感覚情報を入力とし,筋活動を出力とする機械学習モデルを構築し,学習されたモデルにおいて,どの感覚情報に大きな重みが設定されたかを見ることにより,重要な感覚情報の同定を行った.対象とする感覚情報として,立位維持や歩行において重要とされている感覚情報である,画像情報を得る視覚,重力方向や加速度を知る前庭感覚,関節角や皮膚表面圧力等を感じる体性感覚を対象として考えた.このうち視覚は,先行研究により,起立動作に与える影響が少ないことが明らかとなっていたため,視覚を除く前庭感覚,体性感覚を対象とした.前庭感覚を頭部の加速度,体性感覚を関節角度と足底部反力として定量化した.また,筋活動は,個々の筋の活動ではなく,機能単位でまとまった筋群の活動として表現することにより,各感覚情報が起立動作におけるどの機能に対して大きな重みを持つかを明らかにすることを目指した.以上の形で,頭部加速度,関節角度,足底部反力を入力とし,筋群の活動度を出力とする機械学習モデルを構築した.結果,各動作に対して重要な感覚情報が同定され,ヒトが起立動作を行う際は,股角度に基づき上体を前屈させ,次に足角度と足底部反力に基づき離臀し,足・膝・腰角度と足底部反力に基づき全身の伸展を行い,最後に腰角度に基づき起立後の安定化を行っていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,感覚情報に基づく起立動作の制御メカニズムを明らかにするという目的に対し,起立動作制御に用いられる多くの感覚情報の中で,どの感覚情報がより重要視されているのかを明らかにする研究を行っていた.過去に行った起立動作の計測実験のデータをもとに,感覚入力と筋活動出力の間の関係を機械学習モデルに学習させ,そのモデルを解析することによって,起立動作の各動作フェーズにおいて,各筋群の活動の生成に対して大きな重みをもつ感覚入力の同定を行った.さらに,起立動作では過去の運動に基づくフィードフォワード信号も重要な役割を占めるという考えのもと,フィードフォワード信号も機械学習モデルの入力とした.さらに,機械学習モデルの出力は,個々の筋の活動ではなく筋群の活動度とし,筋活動の運動に対する寄与との関連を明確にできるようにした.以上のような形で,感覚情報とフィードフォワード信号を入力,筋群活動を出力とする機械学習モデルを構築し,個々の感覚情報とフィードフォワード信号が筋群活動に対して持つ重みを調べた.結果,実際に起立動作の筋活動生成に対して重要な感覚情報の同定に成功し,ヒトが立ち上がる際に,股角度をもとに前屈,足角度や足底部反力をもとに離臀,足,膝,腰角度と足底部反力に基づき伸展,腰角度に基づき安定化を行っていることを明らかにした.また,重要な感覚を同定できただけでなく,ヒトが起立動作を行う際には,動作フェーズに応じて重視する感覚情報を切り替えながら,適切に運動を制御していることも,明らかとなった.以上のことから,当初の計画以上に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,特に起立動作の筋活動制御が学習されるメカニズムを明らかにすることを目的とする.リハビリテーション等に応用することを考えると,筋力の低下や関節可動域の減少等,筋骨格系のパラメータが変化した際に,その変化に適応するメカニズムを明らかにすることが重要である.筋骨格のパラメータ変化に適応するメカニズムが明らかになることにより,実際に筋骨格のパラメータ変化が発生した際に,より早く変化後の筋骨格系に適応し,運動の不自由が発生する期間をできる限り少なくするような補助の方法を考えることが可能となる.そのために,本年度は,筋骨格系のパラメータ変化に対する適応メカニズムを明らかにすることを目的として,研究を行う.筋骨格系のパラメータ変化に対する適応メカニズムを明らかにするため,健常者の筋骨格系のパラメータを変化させ,その際の起立動作の計測を行い,起立動作の筋活動と運動軌道が,起立動作を行うごとにどう変化していくかを調べる.健常者の筋骨格系のパラメータを変化させるために,高齢者疑似体験教材を用いる.高齢者疑似体験教材では,サポーターによる関節可動域の制限や,手足に重りをつけることによる筋力低下の再現を行うことができる.この高齢者疑似体験教材を用いて,健常者の筋骨格系のパラメータを変化させる.高齢者疑似体験教材を装着した状態で起立動作を行ってもらい,その筋活動,運動軌道,床反力,足底面圧力分布を計測する.起立動作を複数回実施することにより,徐々に新しい筋骨格系に適応し,動作が変化すると考えられる.どのような動作変化が起こったかを調べることにより,筋骨格系の変化に対する適応メカニズムを明らかにする.
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[Presentation] Muscle Tension Analysis in Stroke Patient Sit-to-Stand Motion by Joint Torque-Based Normalization2020
Author(s)
Ruoxi Wang, Qi An, Ningjia Yang, Hiroki Kogami, Kazunori Yoshida, Hiroyuki Hamada, Shingo Shimoda, Hiroshi Yamasaki, Moeka Sonoo, Fady Alnajjar, Noriaki Hattori, Kouji Takahashi, Takanori Fujii, Hironori Otomune, Ichiro Miyai, Atsushi Yamashita, Hajime Asama
Organizer
5th International Conference on NeuroRehabilitaion (ICNR2020)
Int'l Joint Research