2020 Fiscal Year Annual Research Report
乳児期の触覚異常による自閉スペクトラム症スクリーニング法の検討
Project/Area Number |
20J10402
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神谷 千織 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 自閉スペクトラム症 / 感覚異常 / 乳児 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経発達障害の自閉スペクトラム症(ASD)は、言語発達が未熟な乳児期においては診断が困難である。一方でASD児の多くが乳児期から触覚をはじめとする感覚異常を呈していることが報告されている。本研究は乳児とその母親を、生後1ヶ月、7ヵ月、12ヵ月、18ヵ月で縦断的に追跡し、感覚特性と社会性発達についての関係を明らかにすること、また生後7ヵ月では感覚刺激に対する脳活動を測定し、社会性との関連を客観的指標で明らかにすることを目的に行った。 2020年度は、本研究の事前調査として、大阪大学附属病院に通院している4-17歳のASDの子248名と、一般公募した定型発達児94名を対象にASDに特徴的な感覚特性についてのデータを解析した。その結果、感覚処理モダリティ(聴覚、視覚、触覚、前庭覚、複合感覚、口腔感覚)に複数異常が存在するとASDである確率が高く、聴覚と触覚の異常はASDの重症度と正の関連が見られた。またASD児において聴覚、視覚、触覚の過敏性は子どもの問題行動の外向性の問題と関連が見られた。 同時に生後lヵ月の乳児150名のリクルートを行った。追跡調査では生後7ヵ月児73名、生後12ヵ月児36名、生後18ヵ月児9名のデータを取り終えた。事前調査の結果を踏まえて、生後7ヵ月の乳児の脳波実験では、聴覚と触覚刺激の両方を行った。解析の結果、生後1ヵ月児の感覚プロファイルによる異常の発症率は10.6-25.7%であった。生後1ヵ月において、感覚異常は乳児の睡眠の問題と親のストレスと関連があった。しかし、生後1ヵ月と感覚特性と周産期要因とは、関連が見られなかった。さらに生後lヵ月と生後7ヵ月の感覚異常は、聴覚、触覚で関連がある一方で、視覚では関連が見られなかった。また現時点での解析結果では、生後7ヵ月の脳波のERP、および視線計測装置で測定した乳児の視線移動は、感党異常と関連が見られていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルスの影響により、緊急事態宣言中は参加希望者が少なく、大学閉鎖による研究中断もあり、実験に遅れが生じた。被験者の募集と実験は当初より遅れたものの、参加登録者数は予定数150名に達した。現在、生後7ヵ月までの質問紙調査は結果の検討を行い、その他のデータは解析準備中である。また事前調査では、感覚異常と子どもの問題行動についての検討を行い、国際学会(International Society for Autism Research)、および国内学会(日本発達心理学会)で発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
生後1ヵ月、7ヵ月の感覚プロファイルと乳児の周産期要因・母親のストレスの結果は、2021年の小児神経学会で発表予定である。また本年度中に生後7ヵ月までのデータをまとめて、国際学会で発表し、論文化を行う予定である。今後、生後7ヵ月、12ヵ月、18ヵ月の調査は予定症例数に達していないため症例数を増やし、最終的に縦断的に統計学的解析を行う予定である。
|
Research Products
(2 results)