2020 Fiscal Year Annual Research Report
結晶成長のその場観察と成長環境制御による有機低分子化合物の結晶多形制御技術開発
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20J10452
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
釣 優香 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 結晶多形 / レーザー誘起核発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初予定していた相転移観察の研究計画を変更し、研究目的である安定性の高い準安定形結晶を作製できる結晶化プロセスの確立に対して、高効率な結晶作製を実現するためにパルスレーザー照射による結晶化誘起のパルス時間幅依存性を調査した。医薬品開発において、候補となる化合物の結晶多形探索及び多形制御は極めて重要であり、目的の多形を高効率に核発生させることは重要である。レーザーによる結晶化誘起技術は、さまざまな化合物に対して核発生の実現が期待されている一方で、結晶化確率を向上させるためには、レーザーの波長、エネルギー、照射時間、パルス時間幅などの複数の条件を、化合物ごとに最適化する必要がある。本研究では、結晶化観察が容易な尿素をモデル材料として用いて、結晶化確率と結晶化までの待ち時間のパルス時間幅依存性(300-1200 fs)を調査した。その結果、1000 fsのパルス時間幅で高エネルギーのレーザーを照射すると、最も結晶化確率が高く、短時間で結晶化を誘起することが分かった。一方で、長いパルス時間幅のレーザーは、熱発生の影響が大きく、溶液の温度を上昇させて過飽和度を低下させてしまうため、パルス時間幅が長いレーザーは、熱に弱い化合物や過飽和度の温度依存性が大きい化合物に対しては不適であることも明らかにした。これまで十分な検討がされていなかったパルス時間幅の検討を行うことによって、パルス時間幅条件の最適化の重要性を示し、さまざまな化合物に対してより効率的に核発生を誘起できる可能性を示した。本年度では、これらの成果を国内会議及び国際会議で報告しており、計2件の発表を行った。当初計画していた検討と異なる調査を行ったが、結晶化プロセスの確立に対してレーザーパルス時間幅の検討による核発生誘起の高効率化を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初予定していた計画と異なり、結晶核発生に対する検討を行ったが、準安定形を効率的に核発生させるための手法となりえるレーザー照射による核発生技術におけるパルス時間幅が及ぼす影響を調査し、結果として、これまで不十分であったパルス時間幅の検討によって核発生の高効率化が実現できることを示した。準安定形作製への応用が期待できることから、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当初と異なる核発生の高効率化に向けて取り組んだので、次年度は本年度行う予定であった成長観察を実施する。現在、位相差顕微鏡を用いた結晶表面に着目した成長観察を行っており、引き続き検討を進める予定である。
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Research Products
(3 results)