2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J10508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 健司 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 環境浄化触媒 / イオン伝導 / 希土類ケイ酸塩 / 揮発性有機化合物 / 貴金属フリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、低温でもあらゆる揮発性有機化合物を完全分解できる革新的な環境浄化触媒の開発を目指している。このような高活性を実現するため、格子内部から酸素を供給し、分解反応を促進できる材料を助触媒として用いる。さらに、助触媒から活性種に酸素種を供給する際には、助触媒の格子内を酸化物イオン伝導が移動していると考えられることから、助触媒の「酸化物イオン伝導性」に着目し、新規な高活性触媒の設計および開発を行う。 これまでに、低温でも高い酸化物イオン伝導性を示すことが知られているアパタイト型ケイ酸ランタン(La10Si6O27)に価数変化しやすいCo2+/3+イオンを固溶させることで酸化還元能を付与したLa10Si5CoO27-δを助触媒として、高い酸化活性を有するPtとともに高比表面積を有するγ-Al2O3に分散担持した触媒についてトルエン燃焼活性を調べたところ、トルエンを120°Cで完全燃焼し、従来の触媒(Pt/γ-Al2O3:トルエン完全燃焼温度240°C)と比較して高い活性を示すことも明らかにしている。しかしながら、この触媒には希少かつ高価な貴金属であるPtを多量に用いるといった問題点があった。 そこで令和2年度は、貴金属フリーであり、かつ高活性を有するトルエン燃焼触媒の開発を目指した。助触媒としてLa10Si5CoO27-δを選択し、活性種および担体の検討を行ったところ、活性種としてはLaCoO3が、担体としてはγ-Al2O3がそれぞれ最適であることを見出した。また、活性種および助触媒の担持率の最適化を行った結果、10wt%LaCoO3/20wt%La10Si5CoO27-δ/γ-Al2O3において最も高いトルエン燃焼活性が得られ、300°Cという低温においてトルエンの完全燃焼(生成物は二酸化炭素と水蒸気のみ)を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人体および環境に対して有害であるトルエンを完全燃焼するためには、従来の貴金属フリー触媒であれば400°C以上の高温を必要としたが、酸化物イオン伝導性の観点から設計したLa10Si5CoO27-δを助触媒とした10wt%LaCoO3/20wt%La10Si5CoO27-δ/γ-Al2O3を用いることで300°Cという極めて低温でトルエンの完全燃焼を実現した。この成果は、既に原著論文として掲載されている。 以上より、「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究により、酸化物イオン伝導性の観点から設計したLa10Si5CoO27-δの助触媒としての汎用性の高さを実証した。そこで今後は、さらなる高活性触媒の開発を目指し、構成金属イオンよりも低価数かつ価数変化しやすい金属イオンを添加するほか、他の希土類ケイ酸塩を助触媒の母体に選択し、優れた性能を有する助触媒材料の開発を行う。また、得られた助触媒材料の酸化物イオン伝導性および電子伝導性を、交流インピーダンス法や酸素-空気濃淡電池による起電力測定などにより評価し、酸素貯蔵放出能との相関を明らかにする。さらに、ラマン分光分析、X線光電子分光測定、粉末X線回折測定により助触媒材料の構造や結合様式を調べるとともに、電子顕微鏡観察や比表面積測定などを行い、表面状態や粒界状態を調べる予定である。
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Research Products
(4 results)