2020 Fiscal Year Annual Research Report
可換環論:非Gorenstein Cohen-Macaulay環論の展開
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20J10517
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
磯部 遼太郎 千葉大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 可換環 / Cohen-Macaulay環 / Gorenstein環 / Ulrichイデアル / Stableイデアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,下記課題(1),(2),(3)についてそれぞれ成果を挙げた。 (1)Ulrichイデアルの構造及び遍在性に関する研究である。超曲面環上のUlrichイデアルの特徴付けを用いることでその構造及び遍在性を明らかにし,かつ対応するUlrich加群の構造を記述した。また,Ulrichイデアルの存在性と基礎環の環構造の対応についても考察を進め,Ulrichイデアルが存在するための十分条件を基礎環の構造を用いて与えることに成功している。さらに,2-AGL環上のUlrichイデアルを具体的に計算することで,非Gorenstein環の環構造とUlrichイデアルの構造・遍在性との関係性を記述した。 (2)環のfiber積の環構造に関する研究である。基礎環の正準イデアル及びstableイデアルの構造用いてfiber積の両イデアルの構造を決定することで,fiber積のalmost Gorenstein性,generalized Gorenstein性,Arf性,weakly Arf性,strictly closed性などを明らかにした。 (3)Stableイデアルの振る舞いを元に,基礎環の内部構造を決定する研究である。基礎環のstableイデアルの振る舞いが一部の拡大環に対しても遺伝することを用いて,Arf環上の整閉イデアルが素イデアル分解に近いイデアルの分解を持つことを示した。その結果,多くの具体例で整閉イデアルを全て分類することに成功している。また,stableイデアルとトレースイデアルの性質を用いることでイデアル論を加群論へと拡張し,Arf環上のreflexive加群の構造を決定する部分的成果も得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により対面での研究集会は全て中止となり,当初予定していた国内外への出張は行えなかった。一方,早期の段階でオンラインによる研究活動を始動させたことにより,多くの研究者との交流やセミナーをこれまで以上に活発に行うことができ,上記に述べた研究成果(1),(2),(3)を挙げることができた。この成果は,研究が概ね順調に進展していることを示していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終目標の1つであるLech予想の解決には至らなかったが,Ulrichイデアル及びstableイデアルの研究を通して,イデアルの構造解析を加群の構造解析に発展させる新たな方法を見出すことができた。今後の研究では,基礎環内のstableイデアルの振る舞いに着目し,以下の課題①,②に取り組む。 ①1次元の非Gorenstein Cohen-Macaulay環上のstableイデアルと対応する加群を全て決定する。 ②理論を高次元化し,一般次元の非Gorenstein Cohen-Macaulay環解析へ応用する。
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