2020 Fiscal Year Annual Research Report
Functional analysis of cellulose-synthase-like involved in saponin biosynthesis
Project/Area Number |
20J10530
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鄭 秀娟 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | サポニン / メタボロン / セルロースシンターゼライク / UGT / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、グリチルリチンやソヤサポニン類の生合成経路において今まで未同定であったC-3位糖鎖の1糖目であるグルクロン酸が、UGTとはまた別の糖転移酵素群であるセルロース合成酵素類似群(Cellulose synthase-like, Csl)から機能的に分化した新規酵素CSyGT(Cellulose synthase derived glycosyltransferase)によって転移されることを見出した。さらに、なぜ1糖目のグルクロン酸だけがUGTではなくCSyGTによって特異的に転移されるのかを解明するため、CSyGTを足場としたサポニン生合成酵素複合体(メタボロン)形成の検証を中心にCSyGTの細胞内局在の解析および他種のサポニン生合成酵素間のタンパク質間相互作用の有無を調べた。
1)緑色蛍光タンパク質GFPをCSyGTと融合させたタンパク質を、各種オルガネラマーカーと一緒にミヤコグサCSyGTノックアウト体において発現させ、共焦点レーザー顕微鏡により観察した。その結果、CSyGTがサポニン生合成において部位特異的な酸化反応を触媒するシトクロムP450(CYP)と同じく小胞体膜に局在することが判明した。
2)Split-ubiquitin法を用いてCSyGTと各サポニン生合成酵素間のタンパク質間相互作用を解析した結果、ミヤコグサ由来CSyGTとβ-アミリン合成酵素(bAS)との相互作用が確認できた。また、カンゾウ由来CSyGTとミヤコグサ由来bAS間にも同様の相互作用が見られたことから、CSyGTとbASの間に見られる相互作用がマメ科植物において保存されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CSyGTがCYPと同様に小胞体膜に局在することを新たに見いだした。また、ソヤサポニン生合成能を失ったミヤコグサCSyGTノックアウト体を用いて細胞内局在解析を行うことで、CSyGTが植物細胞内で小胞体膜に局在することを明らかにすると同時に、GFPと融合させたCSyGTがサポニン生合成酵素として正常に機能し生合成能力を回復しうることを確認した。 Split-ubiquitin法を用いたタンパク質間相互作用解析では、CSyGTがCYPやUGTなどの生合成酵素とは相互作用を示さなかったのに対し、bASと強く相互作用することを明らかにした。これは、CSyGTが同じく小胞体膜に局在するCYPと「直接的に」相互作用すると考えていた当初の予想とは異なる発見であり、「さらに別のタンパク質を介した間接的な相互作用が必要である」という新たな仮説を着想することができた。また、bASは植物代謝経路においてステロール生合成経路とサポニン生合成経路の分岐点に位置する酵素であると同時に、CSyGTは最初の配糖化反応を触媒する酵素であることから、bASとCSyGT間の相互作用が何らかの生理的役割を果たしていると示唆される。当初予定していたメタボロンのサポニン発酵生産への応用にはさらなる研究が必要とされるが、今回得られた知見はメタボロンの形成を介したサポニン生合成制御機構の解明にむけて極めて重要なものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回CSyGTとbASを除いた他種のサポニン生合成タンパク質との相互作用が確認できなかったため、サポニン生合成メタボロンの形成には別途の制御機構が存在すると考えた。そこで、今後の研究は生合成酵素としては機能しないもののメタボロン形成において重要な役割を果たすと推定される未知のメタボロン構成メンバーの探索に重点を置く予定である。そこで、最近報告された近接依存型標識法を用いてCSyGTと相互作用すると思われるタンパク質を網羅的に探索し、質量分析を通して得られたタンパク質を同定する予定である。 近接依存型標識法とは、TurboIDなどのビオチン・リガーゼの非選択的変異体を目的タンパク質に融合し、目的タンパク質と近接したタンパク質をビオチン化することによって標識化し、単離・同定する手法である。この手法は、従来の共免疫沈降法では同定できなかった一時的で弱い相互作用の同定も可能であり、CSyGTのような膜貫通型タンパク質にも適用できることが報告されていることから、本研究課題の目標達成にむけて極めて有効であると考えられる。
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Research Products
(3 results)