2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J10619
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西谷 広平 日本大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 魚類 / 造血因子 / 造血幹細胞 / 造血前駆細胞 / コイ / 免疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血研究は、感染時の免疫システムを理解するために極めて重要であるが、魚類造血のメカニズムは不明な点が多い。魚類造血機構の解明により、魚類感染症の制御に向けた診断法や予防法開発の基盤となることが期待される。本研究では魚類における血球分化因子及び造血幹細胞増殖因子を同定し、魚類造血の分子制御ネットワークを明らかにする事を目的とする。 2020年度は、リンパ球系列の造血因子及び造血幹/前駆細胞増殖因子の機能解析を行った。現在までに赤血球、栓球、単球及び顆粒球系列の造血因子の機能解析を終えている。そこで、本年度はT細胞及びB細胞の増殖因子について機能解析を試みた。なお、本研究はモデル動物であるゼブラフィッシュと近縁魚種であり、造血研究に十分な量の細胞を得ることが出来るコイを用いて実験を行った。 T細胞増殖因子であるInterleukin-7 (IL-7)について、コイIL-7の組み換えタンパク質を作製し機能解析を行った。コイIL-7は幼弱なT細胞集団である胸腺細胞の増殖を促す事を明らかにした。また、B細胞増殖因子についてコイIL-6の組み換えタンパク質の作製に成功しており、今後B細胞に対する増殖活性を検討する。 さらに、造血幹/前駆細胞増殖因子については、Kit-ligand (KITL)の機能解析を行った。真骨魚類は四肢動物との分岐後に全ゲノム重複をより多く経験したためにKITLが2種類以上存在することがわかっている。コイにおいても2種類のKITLであるKITLa及びKITLbが存在している。これら2種類のKITLについて機能解析を行った結果、KITLaのみが血球系列横断的に造血前駆細胞の増殖を促した。 これらの造血因子により、魚類造血細胞の全血球系列への分化誘導が可能になるため、魚類造血ネットワークの解析がより進展すると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
魚類の造血ネットワークを解明するには、各血球系列への決定因子と前駆細胞の存在を明らかにし、造血細胞の詳細な分化経路を示す事が必要である。本研究では、現在までに機能解析を行った魚類造血因子に加えて、リンパ球系列の造血因子の機能解析を行う事で、ほぼ全ての系列決定因子を明らかにする事が出来た。さらに、造血幹/前駆細胞増殖因子である、魚類KITLについても造血細胞に対して機能的な因子であることを証明する事が出来た。 以上の結果より、in vitroにおいて魚類の血球維持及び分化を再現するためのツールを揃えることに成功した。今後は、これらの培養系を用いて造血前駆細胞及び系列決定因子を明らかにしていく事が可能になるため、当初予定していた通りの研究がおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究より、全血球系列への培養が可能となるため、各血球系列へ分化誘導する培養系に対して、siRNA による系列決定に関わる転写因子の遺伝子発現阻害試験を行い、血球系列決定因子を探索する。この実験により、より詳細な造血ネットワークの分子制御機構の解明が可能である。また、造血幹細胞増殖因子であるKITLが魚類において機能的であることが明らかになったため、KITLが造血幹細胞の増殖・維持に関与する事を証明する。さらに、KITLについて造血支持細胞株に対する遺伝子発現解析などを行う事で、更なる幹細胞増殖因子の探索を行う。
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Research Products
(1 results)