2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J10734
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村松 弾 九州大学, 理学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ブルカノ式噴火 / 桜島火山 / 空振観測 / 映像観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は(1)桜島昭和火口における火映変動現象の解析と(2)機動的映像観測システムの開発を中心に実施した。(1)火映変動現象について、前年度の成果としてブルカノ式噴火の爆発1-2秒前に発生する空振を伴う変動(短周期変動)と、噴火開始の数十秒前に始まる緩やかな変動(長周期変動)を見出した。今年度はこれらの現象の整理とメカニズムの考察を進めるために対象期間・イベント数を2011-2015年の90件に増やした。その結果、空振を伴う短周期変動が起こるイベントは全体の3割ほどであるのに対し、長周期変動はほぼ全てのイベントで見られる現象であることがわかった。短周期変動は画像解析から顕著な温度上昇を伴うことが示唆され、爆発直前の火口底での亀裂開口がメカニズムとして考えられる。一方、長周期変動の開始時刻は噴火3秒-5.5分前と幅があり、噴気増加による火映の発達が原因として考えられる。また、長周期変動の時間スケールは先行研究で報告されている噴火前の山体収縮と調和的であり、火道からのガス漏れに対応している可能性がある。以上の結果から、噴火前数秒から数分の時間スケールで起こるガス漏れ(火映の長周期変動)が噴火開始過程において重要であること、また一部のイベントでは火口底での亀裂開口(火映の短周期変動)が爆発のトリガーであり、火道システムの最上部から噴火が開始する可能性が示唆された。後者については本研究で得られた新たな知見である。(2)機動的映像観測システムについては前年度に作成したプロトタイプの電源供給部分を改良し、野外でテスト観測を実施した。霧島硫黄山火山の火口極近傍において鉛蓄電池とソーラーパネルを使用した長期試験を実施し、3週間程度の試験期間で問題なく動作することが実証された。今後、国内外の火山でブルカノ式噴火が発生した際に機動観測を実施し(1)で考察したモデルの検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
火映現象の解析により、短周期と長周期の2種の火映変動現象を見出し、前者はキャップロック破壊のトリガーの可能性があること、後者はブルカノ式噴火の噴火準備過程において重要なプロセスであることが示唆された。特に短周期変動は爆発が浅い部分から始まることを示唆する結果であり、火道の深い部分から噴火が始まるという従来の仮説に一石を投じる結果である。長周期変動は火道システムの減圧(ガス漏れ)を示唆しており、先行研究のモデルと調和的であった。以上の成果からブルカノ式噴火のトリガー過程に対して新たな知見を与えることができた。また、機動的映像観測システムについてもプロトタイプの作成を行い、期待通りの成果が得られた。一方で、爆発地震との比較は十分に行うことができなかった。理由としては、火映変動現象に関して当初予想していた以上の成果が見込まれたためデータ解析と結果のまとめに時間がかかったこと、またCOVID-19の影響で地震アレイ観測が十分に行えなかったことが挙げられる。以上のことを総合して進捗状況を「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策として、開発した機動的映像観測システムを駆使して本研究で提案したモデルを検証することが必要である。火映変動現象の解析により得られた成果は論文としてまとめる。また、より深くトリガー過程を考察するためにも爆発地震との比較が必要である。過去に取得された地震データを活用することでデータの不足を補うことが解決策として考えられる。また、爆発地震を扱っている研究者と意見交換し、メカニズムに関する共通認識を得ることで今後の方向性を検討する。
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Research Products
(4 results)