2020 Fiscal Year Annual Research Report
英文読解における推論生成プロセスの解明:結束性と学習者要因に焦点を当てて
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20J10809
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小木曽 智子 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 英語教育 / リーディング / 文章理解 / 結束性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,文章中の情報や関係性の明示度合いである「結束性」に焦点を当て,英語学習者の読解における推論生成の検証を目指すことを目的としている。文章の結束性(接続詞や代名詞の使用)は読み手の文章理解に影響を与える。しかし,読み手の推論生成に影響する文章の特性の詳細と,それが読み手個人の特性や英文ジャンルとどのように作用しているかは明らかになっていない。そのため,本研究は,異なる結束性のテキストを読んだ際の読解時間や方略使用を調査し,(1)推論生成に影響する情報の特定,(2)読解の困難に関わる読み手の個人差,(3)それらの要因を考慮した推論指導の効果を検証することを目指す。しかし2020年度はCOVID-19の影響から,研究活動が制限された。そのため,実験計画を変更し,先述の目的 (2) 読解の困難に関わる読み手の個人差 に関連する実証実験の分析とメタ分析を2つ行なった。 一つ目の研究では,結束性が読解に与える影響を低熟達度の学習者を対象に検証した。テキストの結束性が高い/低い英文を与え,その理解度を筆記再生法により測定・分析した。結果から,比較的熟達度が低い読み手は,結束性が高いテキストほど理解度が高くなる一方で,熟達度が高い読み手に対しては,結束性が低いテキストが理解を促進する交互作用の傾向が示唆された。本研究の成果は国際学会にて発表し,国際学会誌に投稿した。 二つ目の研究では,第二言語読解における結束性の影響をメタ分析し,英文ジャンルの調整効果を調査した。先行研究から,結束性が読解に与える影響を調査している文献を収集・分析した。メタ分析の結果から,第二言語読解で結束性を扱った研究では結束性の違いが理解度に影響を与えていること,また,結束性が理解度に与える影響をテキストジャンルが調整していることが示唆された。本研究は,国際学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は(1)(2)に関連する,眼球運動測定実験を行う予定であった。しかしながら, 世界的にCOVID-19が流行し,研究・教育活動が制限されたことから,実験機器の使用や対面型のデータ収集が難しくなった。そのため,当初予定していた対面実験の計画を変更し,先述の目的 (2) 読解の困難に関わる読み手の個人差 に関連する実証実験の分析とメタ分析を2つ行なった。研究結果から,テキストの結束性が第二言語読解に与える影響には,読み手の熟達度やテキストジャンルが関連していることが示唆された。令和2年度の研究成果は国際学会にて発表し,学術論文を投稿している。当初予定していた計画とは異なるものの,関連研究を進めることができたため,本研究は現在までに概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,英語学習者の読解中の視線を計測し,(1)推論生成に関わるテキスト情報の特定,(2)読解の困難に関わる読み手の個人差を生物学的データから分析する。具体的には,(1)読み手の視線の動きから読解中の処理を可視化する眼球運動計測機器を用いて,読み手が高/低結束性テキスト読解時に推論生成のために注意を払っている情報 (例. 接続詞) を特定し,(2)読み手の読解中の処理パターン,使用方略といった個人差を要因に分析することで,推論生成に影響を与える読み手の個人差や特徴を明らかにすることを目指す。研究の完成により,読み手の個人差を考慮した推論指導の最適化に示唆を与えることを目指す。なお,COVID-19の感染状況などにより眼球運動測定実験が難しい場合には,メタ分析やオンラインでのデータ収集に研究を変更する。
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[Journal Article] How Japanese EFL readers maintain the local and global coherence of protagonist, intentionality, and causality in narratives: Evidence from eye movements2021
Author(s)
Ushiro, Y., Ogiso, T., Hosoda, M., Nahatame, S., Komuro, R. & Nishi, T.
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Journal Title
ARELE: Annual Review of English Language Education in Japan
Volume: 32
Pages: 65-80
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] The relationship between validation and comprehension in L2 readers: A perspective from different dimensions of situation models2021
Author(s)
Ushiro, Y., Hosoda, M., Ogiso, T., Kamimura, K., Sasaki, Y. & Komuro, R.
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Journal Title
JACET Journal
Volume: 65
Pages: 125-142
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Systematic research synthesis on first and second language multiple-text reading2021
Author(s)
Ushiro, Y., Hijikata, Y., Ogiso, T., Komuro, R., Nishi, T., Kobayashi, S., Okano, S., & Sato, R.
Organizer
AAAL (American Association for Applied Linguistics) 2021 Virtual Conference
Int'l Joint Research
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[Presentation] Monitoring global coherence of protagonist, causal, and intentional dimensions in second language reading: A preliminary study on eye tracking2020
Author(s)
Ushiro, Y., Ogiso, T., Nahatame, S., Hosoda, M., Hijikata, Y., Sasaki, Y., Komuro, R. & Kamimura, K.
Organizer
30th Annual Meeting of the Society for Text & Discourse
Int'l Joint Research
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