2020 Fiscal Year Annual Research Report
制御問題に由来する非線形偏微分方程式系の弱KAM理論を用いた数学解析
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20J10824
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺井 健悟 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 完全非線形偏微分方程式 / ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式 / 平均場ゲーム理論 / 最適制御 / 粘性解 / Aubry-Mather理論 / 非線形随伴法 / 割引消去問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では, (テーマ1)非可算無限連立ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式系における割引消去問題, (テーマ2)平均場ゲーム理論における割引消去問題に取り組んだ. 割引消去問題とは, 最適制御理論に由来を持つ, 割引率と呼ばれる正のパラメータをゼロに近づけたときの解の漸近挙動を明らかにする課題である. この極限として期待されるのは, 加法的固有値問題と呼ばれる定常問題である. この定常問題は初期値解の長時間挙動や均質化問題といった種々の漸近解析に関わりを持つ. 割引消去問題は加法的固有値問題の可解性を証明するのに自然な方法として知られている. テーマ1. 非可算無限連立ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式系の割引消去問題に取り組んだ. 単独方程式や有限連立系の場合と異なる点として, 割引率に対する解の同程度連続性が得られていないことが挙げられる. 本年度では特定のハミルトニアンを取り扱った. まず極限問題となる加法的固有値問題における一意性集合を発見した. 一意性集合とは, その集合において2つの解が等しいならば, 領域全体で等しいことが分かる集合のことである. この一意性集合上で収束することを示すことで, 粘性解が部分列に依らず収束すること, およびその極限が加法的固有値問題の解になっていることを証明した. テーマ2. 平均場ゲーム理論における1階の非線形偏微分方程式系に対して, 弱解理論の枠組みで割引消去問題に取り組んだ. 本年度では, 割引問題の可解性と一意性を証明し, 解の弱コンパクト性および収束の意味での安定性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非可算無限連立ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式系の割引消去問題において, 特定のハミルトニアンの場合に, 解が部分列に依らず収束することが分かった. そして加法的固有値問題の可解性を証明した. その結果を纏めた論文は学術誌に掲載された. 平均場ゲーム理論の割引消去問題においては, 当初の枠組みとは異なる弱解を扱い, 議論の再構築をおこなった. これによって, より一般的なクラスの連立系を扱えるようになった. そして加法的固有値問題の解の部分的な一意性や優解性が得られ, 漸近解析の土台をより整備できた.
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Strategy for Future Research Activity |
平均場ゲーム理論の割引消去問題について引き続き取り組む. 平均場ゲーム理論の加法的固有値問題においても, ハミルトン・ヤコビ方程式と同様に解の多重性がある. カップリング項の影響に注意しながら, 解が部分列に依らず収束するのかどうかを明らかにしていく.
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