2020 Fiscal Year Annual Research Report
細胞構造構成分子の分子交換計測と数理解析に基づくメカノトランスダクション機能解明
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20J10828
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 匠 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / メカノバイオロジー / FRAP / 拡散 / 化学反応 / ストレスファイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の力学感知・適応メカニズム解明のために、細胞内高次構造物の分子交換を定量的に計測する技術基盤を開発した。特に、分子交換が分子拡散と化学反応の両方を含むような比較的短時間スケールの現象に着目し、進展があった。 分子交換を計測する一般的な方法であるFRAP法では、それ自体では拡散と化学反応を分離できない。そこで我々は従来の計測方法に加え、遺伝子組み換えによる変異体の作製と反応拡散方程式に基づく数理モデルを組み合わせた。 遺伝子組み換えでは、化学反応を行わない、つまり反応相手分子に結合しない変異体の作製が可能である。このような変異体は細胞内ではReaction-freeとして分子交換し、その背景では拡散のみが支配的である。一方で、その他の変異体は化学反応を行うため、分子交換は反応拡散方程式に従って計測される。これら両者で得られた分子交換速度の差から、標本分子の化学平衡定数や拡散定数を分離して定量化できる。 この手法は細胞内で分子拡散と化学反応を分離する新しい方法であり、多岐にわたる分子に応用できる。さらには、標本分子のドメイン(化学結合を行うための手)スケールの解析が可能であり、細胞生物学や分子生物学においてインパクトがある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、生細胞内の比較的短時間の分子交換を拡散と化学反応に定量的に分ける方法を開発できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
より長時間(数分を超える)の分子交換に着目する。この時間スケールでは、分子拡散の代わりに細胞内の流動や変形が顕著に現れるため、より複雑な時空間解析が求められる。我々は今年度に開発した遺伝子組み換えとFRAPを組み合わせた技術を応用しながら、必要に応じて数理モデルや数理解析技術を開発する。
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