2020 Fiscal Year Annual Research Report
巨大蛋白質会合体ヘモシアニンを利用した汎用的な電子顕微鏡単粒子解析技術の開発
Project/Area Number |
20J10837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
橋本 翼 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 単粒子解析 / タンパク質工学 / ゲストーホスト化学 / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体高分子の構造解析に現在最もよく用いられているX線結晶構造解析を行うためには、構造解析したい分子の結晶を作成する必要があるが、その結晶化条件を科学的に予測することは未だ困難であり、構造解析研究における大きなボトルネックとなっている。一方で、近年、新たな構造解析手法としてクライオ電子顕微鏡単粒子解析法が大きく注目されている。この手法では、X 線結晶構造解析で必要不可欠である結晶化のプロセスを必要とせずに高分解能構造を決定できる。しかし、分子量が小さく、形状に特徴のない分子を解析対象とする場合、分子像がノイズに埋もれてしまい、顕微鏡写真から判別するのが困難になるという課題も抱えている。本手法をより汎用的な技術とするためには、小さく特徴のない分子でも容易に顕微鏡写真から区別して解析可能な手法の開発が必要である。 本研究では、その課題を解決するため、クライオ電子顕微鏡観察に適した巨大タンパク質ヘモシアニンをホスト分子として、解析対象の分子(ゲスト分子)を包摂し、丸ごと構造解析する手法の構築を試みている。ヘモシアニンは、4 MDaの大きさを持つスルメイカ血リンパ由来の巨大タンパク質であり、円筒状の特徴的な形をしている。 これまでの研究で、その内部空間特異的にゲスト分子を結合させる独自手法の開発に成功している。今年度は、その手法を用いて、ヘモシアニン内部空間に金ナノ粒子を結合させ、透過型電子顕微鏡を用いた負染色観察に供したところ、実際に内部空間にゲスト分子(金ナノ粒子)が包摂されている様子を観察することができた。しかし、クライオ電子顕微鏡単粒子解析を行うには、その包摂効率は不十分であり、まだまだ検討の余地があるということも明らかとなった。また、いくつかのゲスト分子包摂実験を行うことにより、ゲスト分子の電荷によって、ヘモシアニン内部空間への包摂効率が大きく変わるという知見も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、実際にホスト-ゲスト複合体の電子顕微鏡観察を行うことができ、今後検討すべき課題を可視化し、今後取り組むべきことが明確になった。また、今年度は実際に所属大学にクライオ電子顕微鏡が導入されたため、本研究課題を遂行すると同時に、様々な試料のクライオ電子顕微鏡観察や、いくつかのプログラムを用いたデータ解析に関与し、巨大分子-低分子複合体の高分解能構造決定など多くの経験を得た。特に、分子の一部領域のみに着目した構造分類、構造精密化など本研究を進展させるのに有用な解析スキルも習熟した。これらの知見により、今後、より円滑に研究課題を遂行していくことが可能になったと言える。研究課題の進展に加え、本研究課題を遂行するのに必要不可欠なクライオ電子顕微鏡に関する多くの経験や技術を習熟したことからも順調に研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、包摂効率を改善するような電荷を持ったタグをゲスト分子に付加し、効率的な包摂条件の検討を行なっていく予定である。また、ヘモシアニンと同様にクライオ電子顕微鏡単粒子解析に適した巨大分子をホスト分子として利用できないか検討する予定である。
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