2020 Fiscal Year Annual Research Report
Inactivation kinetics modeling of enteric viruses for predictive environmental microbiology toward a safe use of human excreta
Project/Area Number |
20J10868
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大石 若菜 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | サニテーション / 消毒 / マウスノロウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
し尿の利用における微生物学的安全性を担保するための消毒剤添加率及び処理時間の監視基準値の設定には、し尿中病原体不活化モデルが必要である。病原体不活化速度は温度やpH等の環境条件に依存することから、様々な性状のし尿に適用可能なモデルが必要である。また、消毒耐性ウイルスの出現も想定し、監視基準値を設定する必要があるが、ウイルスの消毒耐性メカニズムが明らかになっておらず、想定すべき消毒耐性のレベルを推定できていない。本研究では、病原体不活化モデルの構築および消毒剤低感受性マウスノロウイルスの消毒耐性メカニズムの解明を試みた。 文献の系統的文献検索から得た病原体の不活化率と環境条件に対して、スパースモデリングおよび階層ベイズモデリングを適用し、病原体不活化モデルを作成した。環境条件と反応時間をモデル式の説明変数とすることで、任意の条件と処理時間における病原体の不活化率を予測することに成功した。7種類の病原体とサロゲートについて、不活化モデルを構築し、し尿中における耐性を比較することで、重点的に管理すべき病原体と推奨される環境条件および処理時間を提言した。以上の成果を国際誌と国際学会で発表した。 胃腸炎ウイルスの代表であるノロウイルスのサロゲートとして、マウスノロウイルスを用い、消毒剤としてpH12に調整した水酸化カルシウム水溶液を使用して、消毒剤への曝露と細胞培養を5サイクル繰り返す実験進化を実施した。水酸化カルシウム水溶液への感受性試験を実施した結果、消毒と培養を繰り返して得られたマウスノロウイルスは、消毒剤へ曝露されなかったコントロールのマウスノロウイルスと比較して、水酸化カルシウム水溶液中での不活化速度が低下することが明らかとなった。次世代シーケンサーを用いて低感受性株と感受性株のゲノム配列を解析した結果、消毒剤低感受性株の構造タンパクに特異的な変異が検出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、し尿からの安全な資源回収のための衛生学的安全管理手法の確立を目的としており、研究1年度目においては、スパースモデリングおよび階層ベイズモデリングを用いることで、し尿中に適用可能な病原体不活化モデルを構築することに成功した。また、水酸化カルシウムによる消毒を繰り返すことで、消毒低感受性のマウスノロウイルス株を取得した。ウイルスゲノム全長の配列解析によって、今後の検証実験の足掛かりとなる重要な変異を検出することに成功した。これらの結果から、本研究は順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目においては、ウイルス全ゲノム配列解析で検出された変異がマウスノロウイルスの消毒耐性を引き起こすメカニズムの解明に取り組む。消毒低感受性株に検出された変異を人為的に導入し、外殻タンパクに変異をもつマウスノロウイルスのインフェクシャスクローンを作出する。感受性試験を実施し、変異の導入されていないマウスノロウイルスの感受性と比較することにより、特定の変異が消毒耐性に関与することを検証する。
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