2020 Fiscal Year Annual Research Report
仲介役ロボットが高齢者の悩みを有効に家族に伝えるための質量感提示手法に関する研究
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20J10887
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野口 洋平 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ソーシャルロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
実施計画に沿って研究を進め、ロボットの開発研究については、年度初頭に、準備期間から開発を進めていた、内部に体重移動機構(250グラムのタングステン製おもりがサーボモータで並進・回転運動する仕組み)を有するハンドヘルド型ロボット「OMOY(オモイ)」の第一号プロトタイプについて、CHI'20および人工知能学会全国大会において研究発表した(奨励費交付前に執筆した論文のため謝辞記載はできていない)。また本年度ではこれら研究論文で発表した知見をベースに、改良機であるOMOY-3Dを開発した。これは3次元極座標表現的におもりの位置や速度を制御できるモジュールであり、これにより立体的な体重移動パターンをユーザーに提示することが可能となる。 メッセージングにおける心理的重みの工学的再構成に向けた研究については、メッセージングにおける代表的な表出感情を表現しうる具体的な体重移動パターンの設計研究を進めた。2つのユーザー参加型研究を通して、体重移動に適した設計メソッド自体の探索からはじめて、具体的なパターンの設計、ロボットへの実装、予備実験による動作確認を行った。令和2年度中には対照実験等による詳細な評価を行うには至らなかったが、今後実験参加者数に厚みをもたせることで、設計した各パターンの妥当性を多面的に検証する。 また、本年度には新たな高齢者コミュニティ(宮崎県内)との研究ネットワークを作ることができた。現在は、COVIDの流行の隙をぬう形であるため漸次的にではあるが、仲介役ロボットに関するフィールド活動を進めている。実際のロボットとの対話実験を通して、仲介役としての根本的な対話機能(仲介元シニアの人格や性別、話題等の情報を踏まえて、仲介先への言い回しを切り替える対話AI:伝え方切り替えAI)の開発に向けたデータ収集実験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果欄に記載した業績は、実は奨励費が交付される以前より進めていた研究活動によるものであり、交付後の業績としてはまだ十分な論文発表を行えていない。 しかしながら、現在までにロボットの開発研究は改良機の開発を含めて完了しており、体重移動パターンの設計研究や対話方式の調査研究にも着手することができている。今後、これらの研究を鋭意進めていくことにより、令和3年度にはこれらの内容に関する研究論文発表を行うことは十分射程内であると思われる。 また、当初予定していなかった展開として、令和2年度にはハンドヘルドロボットに適した外装の設計に関する共同研究をはじめることができた。この研究では、犬や猫などを両手で持ち上げた際に「その表皮が筋骨格に対してずれる」特有の感覚(表皮のズレ感覚)の再現を目指した人工皮膚の開発研究を目指している。本共同研究の最初の成果としては、第21回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会における優秀講演賞の共著受賞があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度であるため、全般にユーザー実験に注力し、これまでに進めてきた研究成果を含め、論文にまとめていく。 メッセージングにおける心理的重みの工学的再構成に向けた研究については、上述の通り、評価実験を通して妥当性を検証したのち、結果を論文発表する。 OMOYが仲介した際の仲介先に与える心理的影響を調査する。具体的には、口頭でのメッセージの伝え方と重心移動パターンの組み合わせによる印象の違いを調べる。現段階から、発話と重心移動パターンの総組み合わせ数が膨大になることを予期しているため、大学内の通行人等を対象とした新たな実験計画も取り入れながら進める。 高齢者対象としたフィールド活動は今後も継続し、仲介役ロボットの伝え方切り替えAIの設計に向けたデータ収集実験を進める。 本年度に開始した共同研究については今後も継続し、上述のような皮膚のズレ感覚をもたらす人工皮膚の開発に向けた基礎研究に参加する。
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Research Products
(2 results)