2020 Fiscal Year Annual Research Report
直接支払いは稲作経営の安定性・生産性を向上させたか?:農業政策の国際比較に向けて
Project/Area Number |
20J10895
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日田 アトム 北海道大学, 農学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 直接支払い / 稲作 / 所得変動 / 生産性 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業所得は非農業と比べて低く不安定になりやすい。これを是正するために、特に先進国では、個々の農家に直接に補助金を支払う「直接支払い」が盛んに用いられてきた。わが国でも、初の本格的な直接支払いとして、2010年に「農業者戸別所得補償制度」が導入された。直接支払いの財源は税金であり、その政策効果の検証は不可欠である。 2020年度における研究実績の概要は以下の通りである。第1に、戸別所得補償制度による直接支払いが稲作経営の「安定性」に及ぼした影響については、直接支払いが稲作所得の安定性に及ぼす影響を評価した。この研究成果は、戸別所得補償制度の主目的である経営安定化に関して初めて実証的に評価したものである。また、国際的に標準的に用いられている手法を用いることで、農業政策の国際比較に向けた研究蓄積となる。 第2に、戸別所得補償制度による直接支払いが稲作経営の「生産性」に及ぼした影響についての分析を行った。現在、この成果をまとめた論文を執筆中である。この研究成果は、戸別所得補償制度による直接支払いが、生産性向上が必要な日本農業において望ましくない副作用が生じていなかったか、初めて実証的に評価するものである。また、上記「安定性」についての分析と同様、国際標準の手法を用いている。以上の直接支払いが稲作経営の「安定性」および「生産性」に及ぼした影響に関する研究成果は、国際共著論文として取りまとめている。 また、国際比較分析に向けて、上記「生産性」に関する分析と同様の手法を用いて、中国における酪農生産性の評価分析も行った。日本では経営当たりとして公表されている費用データが、中国では1頭当たりや面積当たりでしか公表されておらず、これは国際比較の上では障害となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に、直接支払いが稲作経営の「安定性」に及ぼした影響を評価した論文は、当初計画していた通り採用前に国際誌に投稿済みである。2020年度においては、審査過程で追加的な計測を行い、論文を修正して再投稿しており、研究成果の公表に向けて順調に進展している。 第2に、直接支払いが稲作経営の「生産性」に及ぼした影響の評価についても、年次計画の通り2020年度中に国際学会で報告したほか、国内学会でも発表した。現在は、追加的な分析を行い、論文の投稿に向けて着実に進展している。 加えて、第3に、将来の国際比較分析に向けて、日本とは定義の異なる中国のデータを用いた分析にも取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、直接支払いが稲作経営の「安定性」に及ぼした影響の評価については、インパクトファクター付き国際誌にて刊行する。 第2に、直接支払いが稲作経営の「生産性」に及ぼした影響の評価については、論文を投稿する。また、国際比較分析に向けて、2020年度までとは異なる手法を用いて、日本の直接支払いによる生産性への影響の要因解明に取り組み、その成果を国際学会にて報告する。 第3に、中国のデータを用いた分析も進め、国際学会での報告ののち論文を投稿する。
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Research Products
(4 results)