2020 Fiscal Year Annual Research Report
ハンガリーの映画監督ヤンチョー・ミクローシュとタル・ベーラの空間表象
Project/Area Number |
20J10942
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
MOLNAR LEVENTE 北海道大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 映画空間 / モダン・シネマ / ハンガリー映画 / ヤンチョー・ミクローシュ / タル・ベーラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2人のハンガリー出身の映画作家ヤンチョー・ミクローシュとタル・ベーラの空間 表象をめぐってモダン・シネマにおける映画的表象を中心的な問題としていた。そのためにまずは、ヤンチョーとタルの編集技法、画面構図、カメラ動き、ロングテイク(カメラの長廻し )に重点を置き彼らの映画空間の特質を明らかにした。彼らはヨーロッパのみならず、世界中に名を馳せているとはいえ、DVDなどの媒体で公開されていない映像作品が未だに多くあるため、ハンガリー/米国のアーカイブを訪問する必要があった。また、作家論をモダン・シネマの文脈まで展開するためには、2人による作品の他に、同時代の中央・東ヨーロッパの映画にみられる空間表象を確認し、多岐にわたる先行研究を整理することも必須だった。最終的には、本研究では、映画において「何が語られているのか?」ではなく、「如何にして表象されているのか?」という観点から映画的表象を論じて、学術論文を投稿し、学会で発表し、最終的には博士論文をまとめた。 論文: ・「「明るい風が吹く」場 : ヤンチョー・ミクローシュ監督の『ザ・コンフロンテーション』における映画空間をめぐって」『層 : 映像と表現』13号、166‐185頁2021年 ・「タル・ベーラの『ファミリー・ネスト』(1977)における空間表象をめぐって」『北海道大学大学院文学院 研究論集20号』33‐50頁、2021年 ・「ヤンチョー・ミクローシュ監督の『カンタータ』における現代性について」『北海道大学大学院文学院 研究論集21号』141‐158頁、2022年 発表 ・「ヤンチョー・ミクローシュ監督の映画におけるヘテロトピアについて」(2020年11月21日、北海道大学映像・現代文化論学会 第4大会、研究発表)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは、2020年9月のハンガリー(ブダペスト)に行う予定だった資料調査・映像確認について。新型コロナウイルス拡大のため、ハンガリーに行くことは不可能だったが、日本学術振興会の科研費を一円も利用せずに、メール/ビデオチャットなどの手段を通じて、バラージュ・ベーラ撮影所(BBS)の資料館(国立映像アーカイブ)にある資料・映像資料を拝見させていただき、さらには映し・スキャンをしてくださった書類を添付して送っていただいた。この作業には、BBS及びブダペスト演劇映画大学(SZFE)の図書館のスタッフより協力をしてもらい、日本学術振興会の科研費を使わないで、他の国の研究機関で入手不可能な先行研究・文献(雑誌・ポスター等々)のみならずヤンチョーとタルが学生時代に制作した脚本・台本、企画書、撮影日記等々を確認することができた。 上記の資料調査の結果は、日本学術振興会の科研費をまったく利用できなかったが、次の論文・口頭発表でまとめていた: 論文: ・「「明るい風が吹く」場 : ヤンチョー・ミクローシュ監督の『ザ・コンフロンテーション』における映画空間をめぐって」『層 : 映像と表現』13号、166‐185頁2021年 ・「タル・ベーラの『ファミリー・ネスト』(1977)における空間表象をめぐって」『北海道大学大学院文学院 研究論集20号』33‐50頁、2021年 ・「ヤンチョー・ミクローシュ監督の『カンタータ』における現代性について」『北海道大学大学院文学院 研究論集21号』141‐158頁、2022年 発表 ・「ヤンチョー・ミクローシュ監督の映画におけるヘテロトピアについて」(2020年11月21日、北海道大学映像・現代文化論学会 第4大会、研究発表)
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Strategy for Future Research Activity |
2021年3月において、同時代の関連作品を確認するためには、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の附属図書館にあるFilm and Video Collections、また、欧州諸国では保管すらされていないヨーロッパ映画を貸出・販売しているVidiots(カリフォルニア州 サンタモニカ)も訪問、利用する。調査の際に、現地でのみ入手可能な関連作品をDVD・ブルーレイで購入する。得られた成果は日本映像学会の大会と国際学会で発表する。 2020年度のハンガリー及び米国における資料調査で幅広く映像を収集、関連資料確認した上で、2021年度には相互比較を重点的に行い、博士論文の執筆に取り掛かる。博士論文では、特別研究員申請書の3.の(2)で詳細に述べた2つの観点から考察を行う。それはつまり、ヤンチョーとタルの映画にみられるフレーミング、画面構図、カメラ動き、ロングテイクといった諸要素を徹底的分析する際に、作家論の小文脈にとどまらず、彼らの空間表象の理解と照合してモダン・シネマという概念を再評価する。そのためには、膨大な数にのぼる映像・映画作品(DVD・ブルーレイ)、並びに映画空間に関する多様な先行研究(日本語のみならず、英語とハンガリー語で書かれた文献も含む)を購入し、整理する。以上のように、ヤンチョーとタルの映画空間をめぐって、先行研究の蓄積とこれまでの研究成果を併せて、映画的表象の問題について博士論文をまとめる。
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