2020 Fiscal Year Annual Research Report
扁平形状を有するアキシャルギャップモータにおける高効率化に関する研究
Project/Area Number |
20J10951
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
綱田 錬 北海道大学, 情報科学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 高効率モータ / 省エネルギー化 / アキシャルギャップモータ / 低コスト / 圧粉鉄心 / ネオジムボンド磁石 / 産業用途 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の大きな意義は,我が国の消費電力の約55%を占めるモータの高効率化を推進することである。更にそのモータの消費電力の中でも,約50%を占める産業用途におけるモータに着目しており,日本の省エネルギー化に大きく貢献することを目的としている。また,より小型・低コストで実現できる等といった付加価値の高いモータを実現することも狙いである。 モータを組み込むシステムによっては,システム全体を小型にするために,モータに扁平な形状が求められる。そこで,本研究では扁平形状で高いトルクを実現できるアキシャルギャップモータ(AGM)に着目した。しかし,従来のAGMは扁平形状で大きいトルクを発生できる一方で,産業用途でよく使用される運転領域では効率が低く,あまり実用化されていない。そこで本研究では,そのAGMにおいて様々な観点から高効率化を実現するための検討及び実証を行った。2020年度の研究では,AGMにおいて主に2つの提案手法を適用することで劇的に効率を向上できることを明らかにした。具体的な提案手法と研究実績を以下に示す。 提案手法①:回転子を磁性材を使用しないコアレス回転子構造とネオジムボンド磁石を組み合わせた構成にすることで回転子内の損失を抑制し,高効率化を実現した。この手法によって,従来のAGMから約10%pt.以上も高い効率を実現できることを明らかにした。 提案手法②:AGMの固定子コアに使用する圧粉鉄心について,仮想材料を膨大に作成し,有限要素法による解析でどのようにモータ特性に影響を与えるか明らかにした。その結果から,AGMの高効率化に適した圧粉鉄心の新しい開発方針を提案した。 以上によって得た研究成果をまとめ,2本のジャーナル論文及び1本の国際学会にて成果を公表している。また,そのうちの1本のジャーナル論文において,日本AEM学会から奨励賞を受賞するなど,学術的に高く評価されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画では,本研究の実施内容はアキシャルギャップモータ(AGM)の固定子コアに使用する圧粉鉄心(SMC)の開発方針の検討を主に実施することであり,おおむね予定通りに進展している。2020年度においては,共同研究を実施している材料会社との綿密な打ち合わせに基づき,SMCの現実的な特性を加味した上で仮想SMC材料を作成した。その仮想SMC材料を用いて有限要素法における解析を実施し,材料特性がAGMに与える影響について,膨大な解析データから考察した。また,その結果からAGMの高効率化に適した次世代のSMC材料の開発方針について検討し,ここまでをジャーナル論文にまとめて公表している。 また,新しいSMC材料の開発方針を提案するのみにとどまらず,提案した方針に従って企業との協力の下,実際に新しいSMC材料を製造した。新開発SMC材料をAGMに用いた試作機も製造が完了したため,2021年度には実験における検証も行う予定である。 本来であれば,新しいSMC材料を用いた試作機の実験を2020年度中に実施する計画であった。しかし,仮想SMC材料を用いた解析の結果から,特性をよく知るために複数のSMC材料を製造する計画に変更されたため,当初の予定よりも製造に時間がかかった。しかし,おおむね予定通りの進捗であることに加えて,当初の予定よりも多くの検証が2021年度に実施できる状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の本研究における実施内容としては,大きく分けて以下の2つがある。 実施内容①:2020年度の検討によって製造した新しいSMC材料を用いたAGMの試作機を実験において,その特性を検証する。また,実験における結果と有限要素法における解析の結果を比較し,解析結果の整合性を確認する。そして解析結果と実験結果の乖離の原因を明らかにし,より実機を製造した際の特性の劣化を抑制できる製造方法や構造について検討する。 実施内容②:最終的にはAGMの大量生産を想定しているため,SMCの製造方法によるAGMの特性の違いについて検証する。具体的には,SMCコアを削り出しで作製した切削コアと,プレス成型した金型コアにおける特性の比較を実験によって実施する。上記の内容は有限要素法における解析では明らかにすることができないため,実験で明らかにすることによって,AGMの大量生産時の適切な製造方法や注意点などを検討する際の一助とすることを目的としている。 また上記の2項目に加えて,更なる製造性の向上や,音・振動などの低減などに関しても適した形状を模索し,より付加価値の高いモータを実現することを検討する。
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